セールスイネーブルメントとは?基本から施策など初心者向けに解説

投稿者: UmeeTechnologies Inc.

セールス・イネーブルメントとは、個々の営業活動でも継続的に成果を挙げることを目的とした営業組織の強化・改善に関する取り組み全般のことを指します。つまり、「成果を出せる営業マンを常に輩出する営業組織の仕組み化・人材育成の仕組み化」です。

営業課題として「営業部の営業力強化・底上げ」を挙げる方は多いと思います。

営業は属人的で「個人の営業力に差がある」「営業研修やロールプレイングの成果が分からない」「営業活動を組織で把握していない」という悩みは企業規模に問わずあります。

今回は、営業組織の悩みの根幹ともいえる、属人化した営業活動を組織で支え、成果を挙げる営業業強化の取り組み「セールスイネーブルメント」について解説します。

セールスイネーブルメントとは?

セールスイネーブルメント(Sales Enablement)とは、「ツールを活用して成果を出せる営業マンを常に輩出する営業の仕組み化」を指します。

アメリカで提唱され始め、アマゾン等でも営業人材の育成に注目が集まり、近年、日本でも注目されるようになりました。

営業活動は営業部単独で完結せず、営業活動を支える部門が多く存在し、関係部門全体が「売上を上げる」成果につながらなければ、分業主体の部門成果だけで会社の成長につながりません。

  • 営業戦略の立案、営業フローの管理:営業
  • WEB広告やWEBコンテンツ、広報活動:マーケティング部
  • 研修や人材教育:人事部(HR[)
  • 営業ツールの設定や開発:情報システム部

セールスイネーブルメントは、これらの部門で行う業務が「売上にどれだけ貢献・影響しているか」という視点で指標管理(KPIやKGI)をします。

重要な点は、関連部門の業務が売上に対する指標化=数値化できる体制を作ることです。分業制の意識を撤廃し、営業関連部全体で営業活動に貢献する意識の浸透が重要です。

セールスイネーブルメントの具体的な取り組み

営業活動はデジタル化が進む現代でも属人化しており、人材育成に労力がかかります。

セールスイネーブルメントの定義は営業強化の仕組み化であるため、具体的な取り組みは包括的な改革になっていきます。例を挙げると以下のようなことが想定できます。

  • 組織全体の業務フローを明確化し、各業務の改善ポイントを発見できる体制を作る
  • 成果が出ているエース人材の商談手法・話術やレポートの残し方、着眼点などを他社員に教材として共有する
  • 基本から研修やロールプレイングの積極的な実施ならびにフォロー
  • 個別コーチング体制の確立
  • そしてこれらをPDCAフローに乗せる

新商品が出るたびに商品カタログやWEBコンテンツなどの営業資料の作成と、その説明営業手法の確立・洗練が必要で、その背後には営業フローの構築、営業マンの教育・研修が必ずセットになっています。さらに効率的に成果を出すにはマーケティングデータも活用すべきです。

重要な点は、販売準備から成果を挙げるまでの営業業務が「分離された業務」ではなく「営業部全体で連携した業務」として全体最適化をして、より効率良く成果を挙げる体制を作ることです。

現場の営業を人間が行う以上、商談クロージングまで流れるような組織体制は必須と考えられ、セールスイネーブルメントが最先端営業組織として取り上げられるようになりました。

さらに、セールスイネーブルメントに取り組む時に重要視される点が、やはりPDCAの体制です。

デジタルマーケティングと同様に、営業をする(マーケティングでは施策・キャンペーンを回す)フェーズになってからは、いかに最短距離で勝ち筋の営業パターンを発掘できるか、が重要になります。

営業人材の育成や営業施策のアップデートは販売後も継続することで、組織として営業力を強化することが可能になります。

とはいえ、ツールを使わず人海戦術で持続可能な人材強化の仕組みを作ることはほぼ不可能です。この仕組みを特定の人物だけが働きかけているだけでは組織化という観点からすると実現できていません。その人物が転職や異動になった途端に崩れるでしょう。

セールスイネーブルメントが注目される背景

セールスイネーブルメントは2010年代前半に生まれ、BtoB営業の研究を行っているCSOインサイトの調査によると、アメリカでは2017年で、販売組織の約60%が「セールスイネーブルメントを専門で扱う人やプログラム、活動を持っている」という状況で、年々浸透しています。

出典:Fifth Annual Sales Enablement Study -2019 Sales Enablement Report

1.マーケティングオートメーション(MA)の発展

先ほどから例に挙げるように、セールスイネーブルメントの浸透を後押しする要因の1つにMA(マーケティングオートメーション)ツールの発展があります。

WEBマーケティングでは、WEBページ上のお客様のクリックや閲覧状況を非常に高い精度で再現・データ計測できるため、リード創出やナーチャリングの質向上などが実現してきたのに、営業チームがアプローチすると途端に失注、数をさばききれないという問題が顕在化してきたということです。

効果的なキャッチコピーを選定できて、より明確な顧客ペインが見えているのに成約に持っていけなければ意味がなく、何とか営業を強化しなければならない、という背景が強いです。

この流れは日本にも遠くない将来で必ずやってくるでしょう。マーケティングオートメーションと同じように。

理想はマーケティングオートメーションとセールスイネーブルメントがデータドリブンでつながっていくことです。

2.属人的な営業(活動を把握できていない)

SFAやCRMを導入している企業は比較的に多いのではないでしょうか。

しかし、顧客管理だけの利用をしている等、営業部単独で顧客情報を持ち、マーケティング部や営業資料作成チームが分断されて、顧客にクリティカルな営業ができていない問題が顕在化しました。

このような問題を解決するには、営業組織で横断的に営業を行う必要があり、セールスイネーブルメントの普及につながっています。

セールスイネーブルメントツールでできること

セールス・イネーブルメントと同様に注目を浴びている「セールス・テック(SalesTech)」というものがあります。これは、ITやAI技術を活用して営業の効率化・成果向上を目指すことを指し、SFA(Sales Force Automation)やCRM(Customer Relationship Management:顧客管理)、MA(Marketing Automation)といったツールを使って顧客の選定効率化や潜在顧客の発掘などを行います。

しかし、セールステックに精通されている方ほど痛感している点があり、それは現状の多くのSFA・CRMではリアルの商談データ化ができないということです。

つまり、普通にSFA・CRMを活用しても、本質的にPDCAを実践できているか、実際の商談で研修・指導内容を実践、改善できているかは個人の裁量に依存しており、理想的なセールスイネーブルメントを実現できません。商談結果は担当者の手入力レポートのみで語られます。

そこで生まれてきた新しい技術が「商談解析技術」です。

商談解析ツールによって、従来できなかった商談内容をデータ化できるようになり、より実践的に踏み込んだ営業PDCAが実践できるようになります。

営業報告書、営業日報を記入して状況シェアすることは、記入者の主観が多くなり、重要な顧客の声が一切入りません。マーケティングで例えると、お客様のアクセス経路、回遊状況などが分からず、最後のクリック結果だけレポートになっているような状態です。

【事例】商談解析と現地コーチングを実現したFront Agentでの取り組み

Front Agentは従来のCRM・SFAでは実現できかった商談内容の可視化ができる話術AI商談解析プラットフォームです。WEB会議、電話、対面の商談を可視化します。

Front Agentにはセールスイネーブルメントを実現する機能が2つあります。

  • 商談展開の可視化:会話ヒートマップ™
  • 上司をAI化し、商談に自動同席:AIコーチング

顧客の重要な反応と会話展開を可視化するレポート機能「会話ヒートマップ™」(特許出願中)は、トップセールスと他社員の商談を具体的に比較することが可能になります。商談レポートが自動教材化できる大きな利点もあります。

上司をAI化し、商談に自動同席する機能「AIコーチング」は、トップセールスが理想とする商談展開を話術AIが読み取り、デスクワークでのセルフコーチングや実際の商談中に具体的な展開を支援します。

これまでの属人化した商談がデータ化され、さらに社内の成功パターンを標準化できるようになり、営業立上げの短縮から成果を上げる営業人材の育成が加速できます。

Front Agent1つだけで商談の効果測定→営業トレーニング→現場実践→効果測定・・・というPDCAサイクルが実現します。

ベテランからの反感と変化

セールスイネーブルメントの1つの目標として、属人的な営業の撤廃=全営業マンが同じような営業ができる体制を作ることがありますが、いきなり標準化した営業を推進するとベテラン営業マンから反感が出ます。

反感がある場合、無理強いしても効果は望めないため、まずデジタルツールの利用度が高い若手にフォーカスして商談のデータ化を始めました。

そうすると、若手の商談でも成果が出ている傾向や、これまで用意していた営業資料で顧客ペインに合っていない箇所が具体的に可視化されてきて、若手の間で商談の在り方を具体的に議論する環境に変わっていきました。

また、若手は話術AIによって、「いくら指導しても忘れる」「営業トークをしゃべることで手一杯」ということから解放され、商談に対してストレスが減ったという心の余裕も生まれてきました。

この変化を体感した組織は、今度はベテランの商談力を可視化し始め、次第とベテランの商談の強みがナレッジとして蓄積されるようになり、商談が自動的に活きた教材にもなっていきました。

そして意外にも、ベテランの商談スタイルが理想のパフォーマンスを発揮しているわけではない、ということも発覚したケースもあります。

ベテランになるほど顧客のニーズを引き出し、それにあった商品を最短距離で成約まで持っていく、というパターンが出来上がっていたのですが、実は顧客のニーズの本質はその商品では解決しきれるものではなかった、ということです。

条件反射的に適した提案をする中で、顧客ニーズの掘り下げや、顧客の不満を回収するマインドが抜けていたことで、新商品開発や企画・イベントの種が拾えない状態だったのです。

そこで、Front Agentを活用することでベテランに対しても実施してほしい商談フローが浸透し、ベテランが理想的な営業活動を営業部の模範として標準化していった実例があります。

セールス・イネーブルメントを実践する

ここでもう一歩、理想的なセールスイネーブルメントの実現に向けたマイルストーンをご紹介します。

いきなり理想的なセールスイネーブルメントの実現は難しいことが多いです。組織体質によって、営業のデータ化状況や営業関連部門との関係は当然変わります。

そこで、下図のフェーズをご覧になっていただき、自分たちがどのフェーズにあるのかを把握して、目標とする体制構築を目指すことをお勧めします。

多くの企業は、連携が取れていない状況から始まり、データドリブンの営業・マーケティングと合致した営業の実施ができている状態に変わっていきます。

セールスイネーブルメントの書籍

最後に、ご自身でセールスイネーブルメントを実践したい方におすすめな書籍をご紹介します。

セールス・イネーブルメント 世界最先端の営業組織の作り方

山下貴宏(著)/ISBN:4761274581
URL:https://www.amazon.co.jp/dp/B082VW6554/

こちらは、セールスフォース・ドットコム社のセールスイネーブルメントを実現した著者の書籍です。

具体的なプロセス設計方法や、NTTコミュニケーションズ、Sansanといった日本企業の導入事例など詳細に紹介されています。

自社でセールスイネーブルメントに取り組むにあたって、何から着手すべきか、想定しておくべき事案はあるか?営業に関連するすべてのビジネスマンにおすすめです。

営業力を強化する世界最新のプラットフォーム セールス・イネーブルメント

バイロン・マシューズ 他(著)/ISBN:4877718052
URL:https://www.amazon.co.jp/dp/B07MZZLYN6

こちらは、セールスイネーブルメントのリーディングカンパニーであるミラーハイマングループのベストプラクティスを紹介する実践ガイドブックです。

世界トップクラスの営業組織の状況を理解でき、営業の効果測定方法など、何を指標にして営業すべきか、間違ったPDCA運用を事前に回避することができるでしょう。

まとめ

営業活動は各々が課された業務を完了すれば上手くいく、ということは難しく、会社全体で業務のコミットメントの本質を認識させることが成功のカギです。

また、営業活動はツールを利用することで測定可能な状態にしなければ、属人化は脱却できません。

売上拡大を目指すためには「営業人材育成がカギ」であること、育成体制も仕組み化すること。さらにはPDCAサイクルを回して、常に変化する顧客・市場に最適化していくことが大切です。

自社の営業活動の見える化から始め、ステップバイステップでセールスイネーブルメントを実現していきましょう!