
リアルな商談ほど、学びになるものはない。けれど、その商談を後から振り返るのは難しい。お客様の生の声も、営業の言葉選びや話題の構成も、商談が終わればその場で消えてしまう。後に残るのは本人の記憶だけ。ロープレで補おうとしても、つくられた練習ではリアルな商談ほどの手応えには届かず、かといって先輩が毎回同席するわけにもいきません。トップセールスの"勝ち筋"が言葉にならないまま、属人化していく──対面営業に携わる組織なら、誰もが突き当たってきた壁ではないでしょうか。
熊本で創業し福岡に本社を構えるエコワークス株式会社も、ビジョンや暮らしへの共感で契約を積み上げるトップセールスの営業を、若手やキャリア採用者にどう再現するかという壁に向き合ってきました。Front Agent の導入後は、社長方針のもとで全商談の録音が文化として定着。蓄積した商談データで営業担当者ごとの会話を比較・可視化したことをきっかけに、ある若手メンバーが自分の営業を客観的に見直し、受注率を約1.5倍に伸ばす変化が生まれています。同社はこの手応えを受け、少人数のテスト利用から関東・福岡・熊本を含む全社へと展開しました。関東拠点の立ち上げを担う新築営業部 部長・小野 恭平 氏に伺いました。

企業名 | エコワークス株式会社 |
|---|---|
業種 | 注文住宅(高気密・高断熱の省エネ/自然素材住宅) |
導入サービス | Front Agent |
課題 | トップセールスの営業手法が暗黙知のまま属人化し、若手・キャリア採用者に再現できない。ロープレでは身につかず、リアル商談は「同席しないと振り返れない」状態だった。 |
成果 | 自分の商談を客観的に見直した若手メンバーが、受注率を約1.5倍に/全商談の録音が全社の文化として定着/議事録作成の手間が消え、営業が「商談そのもの」に集中できる環境に |
エコワークス株式会社は、熊本発祥の住宅会社です。約20年前に現社長が独立して以降、自然素材と高性能にこだわった注文住宅を一貫して手がけ、コロナ禍を機に切り替えた SNS 戦略があたり、九州から関西・関東へと商圏を広げてきました。プランや間取りのスペックではなく、暮らしへの共感やビジョンで選んでいただく──そんなコンセプト型の営業スタイルが同社の特徴です。
ただ、価値観への共感を軸とする営業ほど、その手法は言葉になりにくい。小野氏自身、お客様の暮らし全体やビジョンへの共感を引き出す商談を得意とする一方で、それを若手やキャリア採用者にどう伝えるかには長く歯がゆさを感じてきました。
手立てを打ってこなかったわけではありません。住宅業界向けのロープレツールを導入し、オンラインで営業練習を重ねていた時期もありました。
「ロープレは一定の効果はあったと思っています。ただ、どうしてもリアリティに限界があるんです。お客様役の演技にも難しさがあって。そこから一段、進化させないといけないと感じていました」(小野氏)
つくられた設定での練習は、どうしても型どおりになりがちで、本番の商談の本質まで突けるとは限りません。ロープレより手応えがあったのは、リアルな商談そのものを記録し、共有することでした。
「実際にやってみると、いろんな人のリアル商談をみんなで共有できることのほうが、はるかに勉強になる。ロープレより数倍わかりやすいし、頭に入ってくる。今のスタッフの実感です」(小野氏)
とはいえ、リアル商談は数も多く、先輩が一件ずつ同席して振り返るには限界がある。「学びになるのは分かっている。でも、効率よく振り返る手段がない」──ここが、同社の出発点でした。
「同席しないと、その商談がどうだったのか分からない。結局、本人の感想頼みになってしまう。それを、もう少し俯瞰で見られるようにしたかったんです」(小野氏)
商談を記録・解析する手段として、小野氏は当初、スマートフォンの録音機能で商談を録り、別のツールに読み込ませて解析することも検討していました。比較したうえでの Front Agent の決め手は、大きく三つありました。
自社の家づくりが「ただ建てる」のではなく暮らし全体を設計するものであるように、Front Agent もまた、単に文字を起こすだけのツールではなかった──そこに、小野氏は手応えを感じたといいます。
一つ目は、運用の手軽さ="仕組み化"のしやすさ。 自分たちで録音し、どこかに格納して……という運用は、手間がかかるほど現場に広がりません。
「工数が増えれば、人はやらなくなる。その点 Front Agent は『録音するだけ』で、文字起こしも比較解析も出てくる。これなら利用頻度が上がると感じました」(小野氏)
個人が各自で録音し各自で保存する運用では、どうしても「上げる人・上げない人」の差が出てしまう。録音・蓄積・共有が一つの仕組みとして回ることが、現場で使い続けられる前提でした。
二つ目は、担当者どうしの会話を比較・解析できること。
「担当者ごとの会話を比較してくれる機能は、正直かなり面白いと思いました。こんなに細かく比較するんだ、と」(小野氏)
三つ目は、文字起こし・議事録の精度と、その先の解析までが一体であること。 以前使っていたツールは文字起こしと議事録までで止まっていました。Front Agent は議事録を高い精度で残しつつ、そこから会話解析へとつながる点が、決定的な違いでした。
これら3点を評価したエコワークスは、少人数でのテスト利用から、関東・福岡・熊本を含む全社展開へと踏み切ります。費用はかかっても、一部のメンバーだけが使うのではなく、全員が同じ仕組みで録音し、共有してこそ意味がある──そう判断したからこその全社展開でした。

導入後、最も象徴的な変化は、ある若手メンバー(以下、Aさん)に表れました。Front Agent が出力した会話の比較レポートを通じて、自分の営業をはじめて客観的に見たことがきっかけでした。
「本人は、私と"同じように喋っているつもり"だったんです。話す内容や順番も、ある程度は型化されていますから。でも、レポートを見ると意外と違っていた。無意識のクセに気づけたんですね。そこからの伸びがすごくて、レポートが出たあとは正直かなり売っています」(小野氏)
Aさんがレポートから掴んだのは、トップパフォーマーである小野氏の会話との"違い"でした。自分がやれていなかった──小野氏が自然に行っていた会話を見つけ出し、それを意識して自分の商談で実践するようになったのです。第三者のデータが「何を真似ればいいか」を具体的に示したことで、先輩の背中を見て覚えるしかなかった学びが、再現可能なものに変わりました。
その結果、受注率は約1.5倍に。高単価で、数を多く売るビジネスではない注文住宅において、受注率がそれだけ伸びる意味は大きいと小野氏は言います。
「受注率が上がるだけで、結果は全然違ってきます。しかも本人がもともと素直なタイプで、フィードバックをスッと受け止めて変えられた。立場や経験を重ねるほど人はなかなか変われないものですが、彼はそれができた」(小野氏)
ここで効いたのが、第三者目線のフィードバックでした。
「私たちマネージャーも、的確にフィードバックしきれないことは多いんです。その点、データという第三者の目線で差分を見せてくれるのはいい。"認知の限界"を、Front Agent がうまく突破してくれる感覚があります」(小野氏)
先輩への同席だけが学びの手段だった頃と違い、Aさんは自分のペースで、自分の商談とトップセールスの商談の差分を見直せるようになりました。この「データから自分で気づき、直す」サイクルこそ、同社が最も手応えを感じている変化です。
同じ解析は、小野氏自身の営業スタイルも映し出しました。
「お客様はどうしても間取りやスペックの話に意識が向きがちで、営業もつい引っ張られてしまう。でも、いかに上手にうちの世界観に共感していただけるよう導くかが大事なんです。レポートでも、私はビジョン共感の話が多く出ていました」(小野氏)
担当者ごとに話題の傾向やキーワードが可視化されることで、"誰が、顧客とどう相対しているか"が、感覚ではなくデータで見えるようになりつつあります。トップセールスの勝ち筋を、若手が参照できる"型"として共有していく土台が整い始めています。
こうした活用の前提となるのが、「全商談を録音する」文化です。多くの企業が「録音が定着せず、解析にたどり着けない」入り口でつまずくなか、エコワークスは意思を持ってこの文化を根づかせました。
「社長が会社の方針として"全件録音しよう"と、業務指示に近い形で発信しています。だから原則、録音されているはず、という前提が共有されている。個人が嫌だから録らない、は通らない。そういう習慣にしてもらっています」(小野氏)
お客様への配慮も運用に組み込まれています。受付用紙に「録音しています。ご了承ください」と明記し、来店時のご記入と同時に録音を開始する。言った・言わないを防ぐお客様側のメリットもあり、全件録音が無理なく定着しました。
「録音があるという安心感は、私自身も実感しています。商談に集中したいので、もう手元でメモを取ることはほとんどなくなりました。それだけ録音が当たり前になった、ということですね」(小野氏)
導入前 | 導入後 | |
|---|---|---|
若手メンバーの成果 | 自分の営業の差分が見えず、伸び悩む | トップとの会話の差分を実践 → 受注率が約1.5倍に |
リアル商談の振り返り | 同席しないと分からず、本人の感想・記憶頼み | 全件録音・解析で、誰の商談も俯瞰して振り返れる |
録音の定着 | 個人運用では「やる人・やらない人」の差 | 社長方針のもと全商談録音が全社文化に |
議事録・メモ作業 | 商談中のメモ取りが負担 | メモから解放され、商談そのものに集中 |
フィードバック | マネージャーの主観・経験頼み | データにもとづく第三者目線で差分を可視化 |

Front Agent は現在、エコワークスにとって日々の商談記録と、営業育成の起点として定着しています。今後は、Aさんに表れた変化を他のメンバー・他エリアへと広げ、トップセールスの"型"を組織全体で再現していくフェーズに入っていきます。複数エリアに展開する同社にとって、店舗や地域を越えて優れた商談を共有・分析できることは、営業力の標準化と、若手・キャリア採用者の早期戦力化を後押しする基盤になりつつあります。
その先に見据えているのが、蓄積した会話データを、営業育成にとどまらず組織のナレッジとして活かす取り組みです。小野氏はすでに、自身の商談を蓄積した"小野ボット"として、メンバーが「小野さんならどう考えるか」を引き出せる仕組みづくりを始めています。
「録音とリンク共有があるので、該当の場面をそのまま聴きにも行ける。横展開のやり方として始めています」(小野氏)
担当者の引き継ぎも、録音や議事録をたどればスムーズになります。こうした会話データの活用が、外部のツールに頼らず Front Agent のなかで完結していく世界を、同社とともに目指しています。
最後に、同じような課題を抱える企業へのメッセージを伺いました。
「おすすめは、まず担当者どうしの会話比較です。話していることの共通点が見えるのは、本当に分かりやすい。今いちばん効果を感じている使い方です」(小野氏)
「もう一つは録音そのもの。議事録が消えたり、記録を忘れたりしない。そして成熟したプレイヤーのリアル商談を、何本でも聴ける。全商談を録音するので全部聴ける――これは、これまで持っていなかった"会社の財産"になります」(小野氏)
「マネージャーが的確にフィードバックしきれない部分を、客観的なデータが補ってくれる。"認知の限界"を、Front Agent がうまく突破してくれる。若手こそ、その効果が大きいと思います」(小野氏)
Front Agent は、エコワークスにとって単なる議事録ツールではありません。
価値観で売る営業の"無意識"を、データで言語化する道具。
マネージャーの主観に頼らず、若手がデータから学んで自走する基盤。
そして、AI 時代に企業の差別化の源泉となる一次情報=「顧客との生の会話データ」を、会社に残し続ける仕組み。
「同じように話しているつもり」だった若手が、トップとの会話の差分に気づいて実践し、受注率を約1.5倍に伸ばす――。エコワークスの取り組みは、住宅・注文住宅にとどまらず、お客様ごとに正解が変わり、トップセールスの手法が属人化しがちなあらゆる対面営業組織(不動産・保険・人材・コンサルティングなど)に、確かなヒントを与えてくれます。
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