AI活用で「顧客の生の声」から勝ち筋を可視化! 三菱地所レジデンスが実践するCX向上と人材育成

 三菱地所レジデンスにとって、対面営業における「接客の属人化」は、長年にわたりCX(顧客体験)向上を阻む壁となってきた。同社はこの課題に対し、営業現場で得られる「顧客の生の声」をAIで分析することで、接客品質向上と標準化を実現させ、CX向上に挑んでいる。今後は、この取り組みを営業領域にとどめず、マーケティング戦略や従業員エンゲージメント向上など、さらなる可能性を視野に入れている。 今回は、「顧客の生の声」を起点としたAIによるインサイト活用について、三菱地所レジデンスの池田至氏と、Umee Technologiesの新納弘崇氏に話を聞いた。

──三菱地所レジデンスは「AIを活用した接客品質向上」に取り組んでいると伺いました。どのような狙いがあるのでしょうか。

池田(三菱地所レジデンス):取り組みの狙いは「CX向上」です。

 当社が販売している住宅は、一生に一度購入するかどうかの高額商材です。お客様には可能な限り質の高い提案や接客体験を提供したいと思っています。ただし、販売のプロセスでは必ず対面営業が発生するため、その際に不可避的に生まれる担当者による接客品質のバラつきよる顧客体験の差が課題でした。

 営業担当者には若手、中堅、ベテランなど様々な属性のメンバーが存在しますし、お客様が提案や接客に求めるポイントも多様です。こうした中で、接客品質を一定に保つのは容易ではなく、結果として営業のスキルや成績にもバラつきが発生していました。

三菱地所レジデンス株式会社 C・DX企画部 CXグループマネージャー 池田至氏

──そうしたバラつきを解消するため、従来はどのような取り組みを行っていたのでしょうか。

池田(三菱地所レジデンス):極めて非効率に思われるかもしれませんが、当社のスキルアップ施策は先輩社員によるロールプレイングが中心でした。理由は明確です。住宅という商材の特性上、お客様への対面営業は個室で実施しているケースがほとんどで、他の社員がその商談の様子を観察することはできません。そのため、たとえ優秀な営業担当者がいても、商談のノウハウを共有する方法は限られていました。結果として、座学での知識共有やロールプレイングを通じて、先輩社員から後輩へ スキルを伝達する手段がなかったのです。

 ただし、その状態に危機感を覚えて、打開策を試みたこともあります。その一つが、営業現場の音声解析でした。営業成績やNPS(顧客推奨度)の高い担当者の提案を録音して、音声解析サービスを提供する企業に分析を依頼しました。しかし、その際に利用したサービスは文字起こしの精度が低かったり、分析結果が出るまでに1ヵ月を要したりと、課題がありました。

 分析に1ヵ月も要してしまうと、住宅の販売期間が終了して、分析結果自体が無用になることもあります。そうした試行錯誤をするなかで出会ったのが、Umee Technologiesの「Front Agent」でした。

試行錯誤の末に出会った「Front Agent」。導入の決め手は?

──様々な失敗を重ねるなかで、「Front Agent」に惹かれた理由は何だったのでしょうか。

池田(三菱地所レジデンス):サービスに出会ったのは、とある企業マッチングサービスがきっかけでした。当時、「Front Agent」はオンライン会議の音声を解析するサービスだったのですが、当社の課題を説明すると、しばらくして「対面営業向けの機能を開発しました」とご連絡をいただきました。その一連の対応で、「熱意のある企業だな」と印象を抱いたのを覚えています。その後、テスト導入を実施した際にも、現場の営業担当者から評価が高く、十分な効果が期待できたため、本導入に至りました。

新納(Umee Technologies):私の印象としては、三菱地所レジデンスの皆さんは仮説思考を身に付けている方が多く、それゆえに「Front Agent」との親和性が高かったのではないかと思っています。

 「Front Agent」は、録音された会話音声のビックデータをAIで分析し、インサイトにつながる仮説立案と検証が可能になるインサイトアナリシスです。これにより、優れた営業活動のノウハウの可視化や、エビデンスに基づいた顧客インサイトの抽出などが可能となります。ただし、そうしたインサイトを有効に活用するには、ユーザー側が課題解決のための仮説を持ち、分析結果を戦略に落とし込むような取り組みが欠かせません。「AIツールを利用して、どのような成果を得たいのか」というビジョンが明確だった点が、三菱地所レジデンスの皆さんが「Front Agent」を有効に利用できた要因だと思います。

「顧客の生の声」と独自AIが信頼性の高い分析を実現

──昨今、音声解析のサービスが数多くリリースされていますが、それらと「Front Agent」の違いはどのような点にあるのでしょうか。 

新納(Umee Technologies):営業活動の分析という観点でいえば、「顧客の生の声」をもとに分析やインサイトを抽出できるのが強みです。 

 たとえば、生成AIツールに営業活動の音声を学習させて、提案内容を分析させることも可能だと思います。しかし、その際に生成AIが「ここが優れている」と示唆を出したポイントの根拠は何なのか。営業活動は提案する商材や価格が変われば、提案の内容やアプローチも異なりますから、一様の基準では評価できないはずです。 

 その点、「Front Agent」は人の会話意識に特化した独自のアルゴリズムを搭載しており、会話の姿勢や人の無意識な意識の流れに対して根拠が確実な分析が可能です。また、分析のポイントと発言のエビデンスを紐づけて提示するため、人の納得性が高く信頼性の高い評価を行えます。 

Umee Technologies株式会社 CEO, Founder 新納弘崇氏

 これは顧客インサイトの抽出という点でも有利です。従来、顧客インサイトを明らかにする際には、インタビューやアンケートの実施といった手法が主流でした。しかし、どんなインタビューやアンケートにも、回答者の遠慮や忖度といったノイズが挟まるリスクはあります。それらのノイズを避けるにはどうすればよいかといえば、普段の会話のなかで無意識に表現されている隠れた本音を捉えることです。「Front Agent」は営業活動時の会話を分析対象とできるため、顧客自身すら意識していない“本音”を捉えやすく、より真に迫った顧客ニーズを抽出できます。 

 「Front Agent」の強みは、明確なエビデンスをもとに営業活動や顧客インサイトを分析できるという点です。より信頼性が高く、疑いの余地のないデータをもとに分析を行うため、営業活動の改善や人材育成の強化により高い効果が期待できます。 

即時の振り返りがPDCAを加速。インサイト分析が導く「勝ち筋」

──三菱地所レジデンスは、現在、「Front Agent」をどのように活用しているのでしょうか。

池田(三菱地所レジデンス):具体的な利用シーンを説明すると、対面営業が始まる前に、お客様に録音する旨の承諾を取り営業担当者がスマートフォンやタブレットで「Front Agent」を開き「録音ボタン」を押すだけです。録音を終了すると会話内容の要約が表示されるため、営業担当者はお客様にどのような提案をしたのかを、接客終了後に振り返れます。

 録音された会話データは「Front Agent」上に蓄積され、提案のノウハウや顧客インサイトを分析して可視化することも可能です。たとえば、成約したケースと成約しなかったケースの会話内容を比較して、成約したケースにはどのようなキーワードが用いられていたのか、そのキーワードはどのような文脈で用いられていたのかなどを分析します。会話データという膨大なビッグデータから「勝ち筋」を導き出すことができるのです。

 具体的な事例を紹介すると、ある時期に当社が販売していたマンションは、ダウンライトが標準となっていました。これは天井の空間を広くすっきり見せる意匠的な工夫でありました。この工夫を説明するか否かで、お客様のご理解が進み契約の成否に有意な差が生まれることがわかったのです。そこで、営業チーム全体に照明の説明を提案に盛り込むように改善したところ、チームの成約率が底上げされるという成果につながりました。

 こうしたノウハウは、大量の対面営業における会話データを比較検討したからこそ抽出できるものであり、「Front Agent」を導入したからこそ得られた成果だと思っています。

──「Front Agent」を利用した現場の営業担当者の反応はいかがですか。

池田(三菱地所レジデンス):若い営業担当者ほど抵抗感が少なかったです。若い営業担当者にとっては「Front Agent」を活用すればするほどこれまで聞くことができなかった先輩社員の生の接客を学べるため、自らのスキルアップにつながります。そうしたメリットを感じやすかったのだと思います。

 一方で、一部の営業担当者からは懸念の声がありました。やはり提案や会話の内容を録音されることに抵抗を感じていたのだと思います。ただし、先ほどお話しした、対面営業の振り返りが即座にできるなどのメリットを説明すると、ほとんどの営業担当者がシステムを受け入れてくれました。「Front Agent」の導入にあたっては、現場の営業担当者の協力をいかに得るかがポイントになるので、システムのメリットを丁寧に説明するのが大切だと思います。

導入後は人材育成が加速。新入社員が数ヵ月で先輩たちと遜色ない成果を創出

──「Front Agent」の導入後、現場の営業活動にはどのような変化がありましたか。

池田(三菱地所レジデンス):一番の変化は、人材育成の加速です。「Front Agent」を導入したことにより、提案の振り返りが即座に可能になったことに加え、優秀な営業担当者の商談内容を録音で聴くこともできるため、人材育成に要するリソースが大幅に減らすことができました。具体的には、新入社員であっても数カ月で、ベテランと変わらない品質での営業活動が可能になっています。これはバラついていた接客品質を標準化するうえで極めて有効でした。実際に「Front Agent」を導入して以降、営業チームの販売成績が底上げされ、均質化しており、従来は成績優秀者と成績下位者で何倍も差がついていたところが、現在では2倍程度の差に収まるようになっています。

 また、新人に限らず、中堅以上の営業担当者のスキルアップにも役立っています。たとえば、マンションの営業活動における提案内容は、販売するマンションの特徴や特性によって大きく異なるため、営業担当者は物件が変わるたびに新たな知識を学ぶ必要があります。

 こうした学習を効率化するうえでも「Front Agent」は大きな役割を果たしています。

営業の枠を超え、マーケティングや従業員のエンゲージメント向上にも活用

──「Front Agent」は営業以外では他にどのようなユースケースが考えられるでしょうか。

新納(Umee Technologies):まず、今回のユースケースの延長線上にマーケティングへの活用が想定できます。「Front Agent」は、顧客の表面的なニーズにとどまらず、隠れた本音であるインサイトを会話データから深掘りして分析できるため、それをマーケティング戦略や販売戦略に落とし込むことが可能です。

 さらに、社内向けに活用すれば、従業員のエンゲージメント向上やES(従業員満足度)向上にも役立ちます。たとえば、1on1ミーティングの音声を録音すれば、従業員がどの話題に関心があるか、どんな話題でモチベーションが向上しているかなどを分析できるでしょう。

 このように「Front Agent」は、人のコミュニケーションが介在する場面には幅広く活用できます。今後、AIがどれだけ進化しようとも、営業やマーケティング、開発、マネジメント、採用など、ビジネスにおいて人が介在する領域はそう簡単になくならないでしょう。そうした人のコミュニケーションがカギになる業務をエンパワーメントするツールとして、「Front Agent」を活用していただきたいです。

AIを「代替」ではなく「能力拡張」に。

──最後に、お二人の今後の展望をお聞かせください。

池田(三菱地所レジデンス):今後、当社では「Front Agent」の全物件に導入する方針です。それにより、営業担当者のPDCAサイクルを加速させ、さらなるCX向上を実現したいと思っています。

 さらに、その先に見据えているのは、「Front Agent」の組織横断的な利用範囲の拡大です。現在はお客様への営業活動に利用していますが、当社のビジネスでは用地取得や建物の建設など、様々な関係者に提案や交渉をする場面が少なくないです。そうした場面にも「Front Agent」は十分活用できると思っています。「Front Agent」の利用範囲拡大を通じて、当社と関わるあらゆるお客様により良い顧客体験を提供するのが目標です。

新納(Umee Technologies):「Front Agent」を通じて、私が提供したいと思っているのは「AIによる省力化」ではなく「AIによる能力拡張」です。たとえば、マネジメントでいえば、部下への指示や説明に費やしていた手間を効率化するのではなく、部下の能力向上やエンゲージメント向上を促す効果的なマネジメントを可能にする。それが「Front Agent」の目指す世界観です。AIを人手の代替ツールではなく、人間の能力を引き出す手段として捉え、様々なビジネスシーンで働く人々を力づけるツールを今後も提供していきたいと思っています。

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