「営業の現場にある"顧客の声"を、会社の資産に」──
製造業スギノマシンが描く、VOC起点のデータドリブン営業への移行

企業名

株式会社スギノマシン

業種

製造業

導入サービス

Front Agent(kintone連携)

課題

顧客の声(VOC)が営業個人に留まり、組織資産として蓄積・活用できていない。

データに基づく営業戦略が描けず、情報基盤そのものが整っていなかった。

成果

顧客情報の引き継ぎ改善、議事録作成時間を1件あたり約30分削減、

週次ミーティング効率化、顧客の声を組織資産として蓄積する基盤づくり。

kintone
利用用途

営業活動の日報入力、見込み案件管理、顧客情報の一元蓄積、週次ミーティングの情報基盤。

Front Agentと連携し、営業の打ち合わせ内容を自動でkintoneに蓄積。

「お客様の声を、営業員のフィルターをかけずにしっかり集めたい」──

株式会社スギノマシン 営業企画部の山田義則氏は、着任時の課題をこう振り返ります。
「切る・削る・洗う・磨く・砕く・解す」の6つの「超技術」を核に多産業へ展開する同社は、技術力を武器にプロダクトアウトで成長してきた一方、最前線の営業が日々受け取る「顧客の声(VOC)」はオフィシャルに蓄積されず、個人のメモに留まっていました。

Front Agentを導入し、営業の打ち合わせ内容をkintoneへ自動蓄積する仕組みを構築。

顧客の声を組織資産に変え、データドリブンな営業への移行シナリオをどう進めたのか。

DX推進の実践知とともに伺いました。 

導入前の課題 ── 顧客の声が組織資産になっていない

株式会社スギノマシンは、富山県に本社を置く産業機械メーカーです。高圧水技術、空気圧技術、管機器技術、エネルギー市場関連の技術開発を重ね、現在では、「切る・削る・洗う・磨く・砕く・解す」の6つの「超技術」を展開しています。顧客の課題に合わせてカスタマイズしながら提案する技術営業が同社のスタイルです。

山田氏は2023年に経営企画本部の営業企画部に着任。広報、マーケティング、営業DX、ブランディングの4軸を複合的に推進する役割を担っています。営業企画部が営業組織ではなく経営企画本部に置かれていることは、設計や製造、事業部に対して営業の視点で横串を刺すには良い環境であると山田氏は感じています。

着任後3か月で社内外を分析し、「デジタル化による営業改革」の企画書を策定。社長の承認を得て、2年間のスパンで推進を開始しました。そこで見えてきた課題は、大きく3つありました。

1つ目は、プロダクトアウトへの偏り。かつては顧客の声を聞いてものづくりをしていましたが、技術力が中心となり、シーズ起点の商品開発に傾いていました。技術力があるがゆえにカスタマイズが容易で、オプション追加で別機種化が進み、年間1台も売れないラインナップが存在。図面やフレームが多種多様に広がり、製造コストも上昇していました。

2つ目は、顧客の声が個人に留まること。 営業員は打ち合わせの内容をノートにメモしていましたが、そのメモはオフィシャルに共有されません。

「営業員の頭の中や手帳に残っているだけ。
そこにはすごく良い情報があるはずなのに、活かしきれていなかった」(山田氏)

既存顧客が何に困っているかという情報が組織に蓄積され難く、新製品開発にも十分に活用できない状態でした。

3つ目は、SFAへの入力が進まないこと。 kintoneは2017年から導入されていましたが、当初は「立った見込みを管理する」だけの使い方に留まっていました。営業活動そのものの入力へと進化させようとしても、入力率は低いまま。月に10件も入力しない営業員が存在する状況でした。

「営業活動に集中したい現場にとって、入力業務に時間を割くのは負担感が大きく、
"営業活動が滞ってしまうのでは"という懸念が現場に根強くあった状況でした」(山田氏)

これら3つの課題を貫く本質は、「顧客の声(VOC)を組織資産として蓄積・活用し、データドリブンな営業・マーケティングへ移行する」という戦略目標に対して、それを支える情報基盤が整っていないことでした。お客様と最も近い営業の情報が個人に留まる限り、プロダクトアウトからの脱却も、データに基づく戦略立案も実現できません。

選定理由 ── 「テキスト化精度」ではなく「蓄積データを分析に活かせるか」で選んだ

Front Agentを知ったきっかけは、コンサルティングを依頼しているパーソル社からの紹介でした。「今後伸びそうなものがある」と紹介を受け、Front Agent以外にも2社のテストを実施しています。

他の2社は「いかに正確にテキスト化できるか」に注力していました。
山田氏も当初はテキスト化精度を重視していましたが、各社の進化のスピードを見て、判断軸を変えました。

「テキスト化の精度は、AIの進化とともに早いスパンで各社同じレベルに上がると感じました。
では1年後、2年後に"選んでよかった"と思えるのはどこか。
それは、蓄積したデータを分析できるかどうかだと考えたんです」(山田氏)

声をためるだけでなく、ためた声を分析し、営業戦略や商品開発に還元できるか」。
山田氏が重視したのは、この「分析」の視点でした。

もう一つの決め手は、kintoneとの連携でした。
スギノマシンでは社内の情報基盤を「kintoneをハブに一元集約する」方針で統一していました。
kintoneに営業活動の日報を入力し、見込み案件を管理し、顧客情報を蓄積する。
その設計思想の中に、Front Agentが自然に組み込めることが重要でした。

「kintoneをベースに、kintoneをハブに、情報を集約するという考え方を社内に落としていった。
ブレないように、できるだけシンプルにしたんです」(山田氏)

Front AgentはkintoneとAPI連携し、営業の打ち合わせで録音された音声を自動でテキスト化してkintoneに蓄積します。
営業員が別のシステムを覚える必要はなく、kintoneという一本の柱の中で完結する。
この一貫した設計が、顧客の声を組織資産として一元集約する基盤となり、社内への浸透を後押しすることになります。

活用プロセスと発見 ── DX推進を成功させた3つの実践知

「対岸にならない」── 半年間の理解活動

Front Agentの導入と並行して、山田氏が最も時間をかけたのは現場との関係づくりでした。

「DX推進で一番大事なのは、推進側と現場が"対岸"にならないことです。
川を挟んで睨み合うような関係になったら、もうアウト。
同じ岸辺に一緒に立つ状態を作ることが最も重要でした」(山田氏)

過去にもDX推進を経験していた山田氏は、この落とし穴を熟知していました。
ここ半年間は「理解活動」として、膝を突き合わせて現場と対話を続けました。
現場から上がる改善要望は、どんな小さなことでも半分以上は対応する。
「言えばやってくれる」という信頼関係を築くことが、推進の土台になったと言います。

ターゲットは「課長」── 恩恵を最も受ける人に届ける

当初は統括部長や事業部長を経由したトップダウンの浸透を試みていましたが、うまくいきませんでした。
山田氏はアプローチを転換します。

「本当にデジタルで恩恵を受けるのは、現場の最前線で働いている課長なんです。
少数のメンバーを率いて利益計画を達成しなければならない。
この人たちをメインステージに上げて、課長をベースにプロジェクトを回し始めたんです」(山田氏)

課長が動くと、その下のメンバーも連鎖的に動き始める。
この波及効果は大きく、チーム単位での顧客の声の蓄積が一気に進む結果につながりました。

あえて3か月遅らせた ── 現場のペースに合わせる勇気

当初の計画では、改革のゴールは2026年春の予定でした。

しかし、現場が変化のスピードについてこれない状況を見て、山田氏はスケジュールを3か月後ろ倒しにする判断をしました。

推進を急ぐよりも、現場が納得して動ける状態を作ることを優先したのです。

「自分のメリット」で行動が変わった瞬間

入力が進まなかった営業員の行動が変わったのは、「自分にとってのメリット」が見えた瞬間でした。

スギノマシンの営業は技術営業のため、顧客先で修理対応を行うこともあります。
しかし、検索性や一覧性が低い状態で管理されていて過去の対応履歴確認に時間がかかっていました
「日報を入れていけば、過去の対応履歴がすぐに参照できるようになる」。
この具体的なメリットを伝えたところ、月10件未満だった担当者の入力が一気に増え始めました。

「人によってメリットを感じるポイントは違う。
リモートの打ち合わせだけでは到達できないので、世間話の中から"ここで困っているんだ"を紐解いて、個別に訴求していく。
すると本当に聞く耳を持ってくれて、動いてくれるようになるんです」(山田氏)

kintoneだけで週次ミーティングが完結 ── 運用して見えた週報の負担

Front Agentで自動テキスト化された営業の打ち合わせ内容がkintoneに蓄積されることで、顧客の声の流れ方が変わりました。
日報がkintoneに集まり、顧客との会話内容もFront Agent経由で自動的にkintone上に記録される。
課長はkintoneを開くだけで、メンバーの活動状況や顧客の声を把握できるようになりました。

ある課長のチームでは、それまでエクセルで資料を準備していた週次ミーティングが、kintoneを立ち上げるだけで完結するようになってきたと聞いていると山田氏は言います。

「こんなに楽になるんだったら、ちゃんと入力しようという好循環が生まれている。
情報がたまれば、さらに便利になる。
その実感が広がっています」(山田氏)

運用が進む中で、もう一つの大きな負担も課題として浮かび上がりました。
週報の作成です。
メンバーが情報をまとめて課長に提出し、課長が集約して部長へ、部長が統括部長へ、さらに事業部長へ。
各階層がそれぞれの方法で情報を集約して上に報告するバケツリレーが、毎週繰り返されていました。

「各階層で平均3〜4時間。部長まで含めて全員がそれだけの時間をかけていた。それを毎週やっていたんです」(山田氏)

課長たちからは「週報の負担をなくしてくれ」という切実な声が上がり、Front Agentとkintoneを組み合わせた週報自動化への着手が始まっています。

成果とインパクト

Before / After

導入前

導入後

変化

営業の打ち合わせ記録

営業員が手帳にメモ。
共有されない

Front Agentで自動テキスト化し、
kintoneに蓄積

人のフィルターを排除し自動蓄積

顧客情報の引き継ぎ

過去の対応履歴が不明。
別担当者は1からやり直し

kintone上で過去の対応履歴を参照可能

情報の連続性を確保

週次ミーティングの準備

エクセルで資料を作成して準備

kintoneを立ち上げるだけで完結

準備工数の解消

SFAへの情報入力

月10件未満の営業員が存在

自分のメリットを理解した人から入力開始

行動変容の連鎖が発生

定性的な変化

課長が推進するチームでは、メンバーが連鎖的に入力を始め、顧客の声がデータとして蓄積される好循環が生まれました。

kintoneが顧客の声を蓄積するハブとして機能し始めたことで、営業活動の日報、顧客との打ち合わせ記録、見込み案件の状況が一つの場所に集約される環境が整いつつあります。
Front Agentで自動テキスト化された内容はkintoneのアプリに自動登録され、課長は週次の振り返りや部下の活動把握をkintone上で完結できるようになりました。
「顧客の声を組織資産にする」という戦略目標に向けた最初のマイルストーンが、ようやく現場で動き始めたと言えます。

現在の活用と今後の展望 ── 「ためる → 分析する → 予測する」の3ステップ

スギノマシンが描くデータドリブン営業への移行は、Front AgentとkintoneでVOCを「ためる」ところから始まり、「分析する」「予測する」へと段階的に拡張していく3ステップ構想です。

山田氏が描く構想は、この道筋にあります。

ステップ1:ためる(現在進行中)。
Front Agentによる営業の打ち合わせの自動テキスト化と、kintoneへの日報入力・顧客の声の蓄積。

現場への浸透を進め、残り2〜3割の入力率向上を図っています。

VOCを組織資産として蓄積する情報基盤づくりが、すべての起点になります。

ステップ2:分析する。
蓄積されたVOC(顧客の声)を地域別・産業別に分析し、営業戦略に活かす構想です。

例えば、各種産業集積エリアをターゲットに設定し、対象業界の現場の情報を集めて分析して有効な営業戦略を企画するなどを検討しています。

さらに、Front Agentで蓄積された営業員の発話データから不足スキルを特定し、最適な教育カリキュラムをAIで提案する構想も描いています。

「BtoBの世界では商品開発に年単位の長い時間がかかる。だからこそ、できるだけフロントローディング(開発の初期段階で顧客ニーズや想定課題などを認識し、設計・検討を前倒しで徹底的に行うことで、後工程での手戻りやコストを最小化する手法)で動きたい。そのためには分析が極めて重要なんです」(山田氏)
「蓄積されたデータで、営業員一人ひとりの強みと課題を分析し、必要な教育を届ける。
そういう世界がいよいよ実現できると感じています」(山田氏)

ステップ3:予測する。
商品ニーズの予測を開発本部と連携して実現し、受注角度の高い顧客を予測して営業を効率化する。

「ためる → 分析する → 予測する」── この3ステップは、顧客の声を組織資産に変え、データドリブンな経営判断を支える仕組みを段階的に立ち上げていくロードマップとして描かれています。

派生展開:業務負荷の軽減 ── 週報自動化への着手

「ためる」ステップの進行に伴い、派生効果として業務負荷の軽減にも取り組みが始まっています。
各階層で平均3〜4時間/週を費やしていた週報作成について、Front Agentが営業の打ち合わせ内容を自動テキスト化し、kintoneのAI機能で日報から週報へ集約・出力する仕組みの構築が進行中です。

「この作業を毎週やっていた。それがなくなるんですよ」(山田氏)

部長以上の管理職を含めた組織全体の時間を、週報作成から分析や現場対応へ振り向けることが可能になります。
週報の自動化は、顧客の声を蓄積する基盤が整ったからこそ実現する、次のステップと位置づけられています。

まとめ

最後に、山田氏にFront Agentを一言で表現していただきました。

新しいビジネスの形を作っていくためのパートナー。
フロントエージェントという仕組みに留まらず、ユミーテクノロジーズという会社そのものに期待しています」(山田氏)

同じ課題を持つ企業にFront Agentを薦めるとしたら、と尋ねると、山田氏は「並走力」を挙げました。

「できないことは正直に"できません"と返してくれる。
でもその裏で代替案を考えて持ってきてくれる。
今できなくても、近い将来それを実現するためにどうすればいいかを一緒に考えてくれる会社です」(山田氏)

顧客の声が営業個人に留まり、組織の資産にならない限り、プロダクトアウトからの脱却も、データに基づく戦略判断も実現できない。

多くの製造業が直面するこの構造的な課題に対し、スギノマシンは「何もしなくても顧客の声が蓄積されていく世界」の実現に挑戦しました。

Front Agentとkintoneの連携による自動蓄積の仕組みは、営業員の負荷を増やすことなく、顧客の声を組織資産へ変え、データドリブンな営業への移行を支える情報基盤になりつつあります。

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