ビジネスで意識すべきカタルシス効果とは
ビジネスに限らず、相手との信頼関係構築にお悩みの方は多いのではないでしょうか?
インターネットの普及によってコミュニケーション力の低下が挙げられるようになり、文字だけではない感情のコミュニケーションは意図的に習得していかなければならない時代にもなってきています。
特に営業は人間関係構築が全てと言えるほど、相手に心を開いてもらう必要があります。
そこで今回は人間関係を良好にする「カタルシス効果」について説明します。
カタルシス効果はビジネスや恋愛、メンタルヘルスなど多くのシーンで活用されています。
カタルシス効果とは
カタルシス効果とは、怒りや不安などネガティブな感情を口に出して心を浄化する効果のことで、精神的に不安定な状態をすっきりさせる状態を意味します。
「カタルシス」は心理学・哲学での精神の浄化を意味し、起源はアリストテレスが演劇用語として使い始めました。それからオーストリアの精神科医シグムント・フロイトが精神分析療法として、この語を採用したことで心理学用語として利用されています。
カタルシス効果が表れる時
カタルシス効果が表れる具体例を紹介します。
誰かに悩みを相談した時
誰かに悩みを打ち明けることは心に解放感をもたらします。
悩みを口にすることはストレス低減に効果があり、占いやカウンセリングを受けることはもちろん、友人や家族に相談することで考えがまとまったり、精神的に安定していきます。
顔を見て話をすることが苦手という方は、電話で相談すると良いでしょう。
作品を見聞きして感動する
感動することも大きな浄化作用があります。
心に響く曲や映画に触れることで自然と涙がこぼれた経験がある方はいると思います。
プロスポーツやアーティストのライブですっきりしてくるという感覚もカタルシスです。
カタルシスは不満だけではなく、感動をすることで心が安らいですっきりするのです。
恋愛
恋愛は「恋わずらい」と言われるほど心を不安定にします。恋愛に悩み過ぎて落ち込んだり、食欲がなくなったりと「うつ」の症状にまで発展することもあります。
やはり恋愛相談は大事なことで、パートナーとの喧嘩や失恋といった精神的に大きなダメージを受けている危険信号のサインでもあります。
また、恋愛相談をすることでカタルシスが生まれるため、相談相手を好きになるということも十分あり得るといわけです。
カタルシス効果で相手と自分に好意が芽生える
人に悩みを相談していて、相談相手に好意が芽生えることは多いでしょう。さらには相談相手も相談者のことを好きになっていくことも自然です。
それには心理学的な理由がちゃんと存在します。
一貫性の原理
まず「フット・イン・ザ・ドア・テクニック」とも呼ばれる「一貫性の原理」です。
一貫性の原理とは、「自分の言動を一貫したものにしたい」と思う心理現象です。
相手に悩みを打ち明けることで、「相手に好意を持っている」ことを深く感じるようになり、次第に好意が大きくなります。
結果的に相談相手が好きになっているということです。
好意の返報性が作用する
悩みを相談するということは、返報性(へんぽうせい)という心理効果が生まれます。
返報性とは「人から何かをしてもらったら、同程度のものでお返ししたくなる」心理現象で、自分の内面を開示することを自己開示の返報性といい、相談相手は本来秘密である悩みを打ち明けられることで、相談者に気持ちのお返しをしたくなります。
さらに好意の返報性という、好意を向けられたら好意を返す気持ちが生じるため、双方がより強く惹かれ合うにようになります。
相談するということは、人と人が共感し合う大事なつながりです。
営業でカタルシス効果を活用する
営業活動で相手にカタルシス効果を感じさせるには、悩みを相談してもらう状況を作ること、相手の悩みを解消することを意識すると良いでしょう。
営業はどうしても提案する立場にあるため悩みの相談を受けるケースになる商談は稀です。
ですが、商談をする状況になったということは、相手に悩みがあることは事実です。
そこでカタルシス効果を得やすい状況を作り出すポイントは以下の通りです。
- 人間関係を早期に構築する
- 良い相談役・聞き上手になる
- 自己開示・好意の返報性を利用する
人間関係を早期に構築する
営業は人と人とのコミュニケーションで成り立っています。たとえ商品が良くても売れず、営業マンの手腕が問われる部分の大半が人間関係の構築です。
トップセールスや部長、社長になるほど話が上手だな、面白いなと思うとき、彼らは意図した話題作りをしているでしょう。いきなり営業トークを始めていないことが多いです。
「雑談力」というような言い方もありますが、「質問力」「信頼を得る質問の仕方」という方が具体的です。
良い相談役になる
言うまでもありませんが、営業マンは顧客の相談役であるべきです。
営業として売ることが業務ですが、売ることを露骨に表現するほど人間関係は営業とお客様という構図になります。
そうした意識をなくすためにも、できるだけ質問する営業スタイルに変えてみましょう。
現代の営業はお客様が事前にネットで情報収集してきていることの方が多く、営業マンが商品説明することのほどんどは既に知っている可能性の方が高く、冗長な情報ほど疎ましく思います。
そうした背景からも、営業マンはお客様のカウンセラーであるという意識でいた方が、結果的に売上につながる可能性が高くなります。
相手が言語化できていないあいまいな相談に対して、相談内容の言語化をしてあげるだけでも、思考が整理されてカタルシスが生まれます。
自己開示・好意の返報性を利用する
営業は初対面の状態から始まることばかりです。
できる限り相手から信頼を得るために、自分のプライベートや悩み、体験を絡めた会話をすることが有効的です。(自己開示の返報性)
特に商材に沿った悩みや体験談は、お客様も同じ課題を持っている可能性があり、共感を引き出しやすいことや「この人になら相談できそうだ」という状況が作りやすくなります。
また、相談に対して良い回答を続けることで好意の返報性が生まれる好循環にもなり得ます。
まとめ
カタルシス効果はモヤモヤした悩みを持っているお客様を適切にエスコートすることでビジネスでも十分活用できる心理現象です。
営業での重要点は、営業マンはお客様のカウンセラーであることにつきます。
提案に移るときは、カタルシスを感じられる状況(相談したいという状況)を作ってから。ということをお忘れなく。
実践する難しさ
カタルシス効果や様々な営業テクニックを駆使した営業手法は、会社独自の資産です。
しかし、これらを意識して営業で実践し続けられる人は限られており、それもあってトップセールスはなかなか生まれないことが日本の現実です。
さらに、営業は属人化していてナレッジ化できていない会社がほとんどです。
Eラーニングや営業研修、営業ロールプレイングを実践しても効果が出にくい、ということはナレッジ化だけでは足りないということです。
そんな中、アメリカでは6割以上の企業で「セールスイネーブルメント」に取り組んでいます。
セールスイネーブルメントとはトップセールスを常に輩出する人材育成の仕組み化のことを指します。
セールスイネーブルメントは、属人化した営業をトップセールスレベルで標準化する目的で取り組まれており、日本でも少しずつ活用が始まってきました。
セールスイネーブルメントはマネジメントの観点からも見逃せません、自社はどの程度実践できているか、ぜひチェックしてみてください。