営業で知っておくべき心理学テクニック

投稿者: UmeeTechnologies Inc.

人間の行動要因を心理面から読み解く心理学は、人間関係構築が重要な営業にとって重要な学問です。

心理学は様々な分野で応用され、スポーツ心理学や犯罪心理学など、多くの業界で浸透しています。当然ビジネスでも心理学が活用され、マネジメントや営業、メンタルケアなど領域に応じた使われ方をしています。

今回は営業活動で実践されているおすすめの心理学テクニックをご紹介します。

営業成果が高い人達が無意識に行っている行動も多く含まれているのではないでしょうか?

心理学テクニック1:ピーク・エンドの法則

ピーク・エンドの法則とは

人が記憶や印象に残っているものは、感情が高ぶったピークの出来事と、それがどのように終わったのか(良かった、悪かった)判断するという法則です。終わり良ければ総て良しということわざもある通りです。

人はピークの体験が結果に大きく影響するため、ミスが起こった場合や商談が終わるころに特別な対応(割引や些細なアメニティプレゼント等)をすることでポジティブな気持ち(嬉しい体験)を引き出すことで、顧客から信頼関係を獲得しやすくなります。

ピーク・エンドの法則を営業に使う

商談ではピークがどこにくるかは状況によって変わりますが、エンドは比較的に流れを予測できます。

顧客に特別なキャンペーンの話を切り出す時は、商談が盛り上がった時にさらに嬉しい情報として提示しましょう。

もしくは、商談の終わりが見えてきた時、顧客の購入判断を前向きに残すために特別感をアピールしましょう。

顧客がその商談で購入をしなくても、潜在顧客として高いポテンシャルを維持できていれば、後日にしっかり商談が前進するはずです。最後に良い印象を残す、感謝の挨拶も良いことです。

また、営業ミスをしたときはしっかり謝罪をし、些細なお詫びをする対策を組織的に用意しておくことで、会社としての信頼も維持できます。

店舗営業の例を挙げると、ディズニーランドでは待機列で飽きさせない展示物を用意することや、出口でキャストが見送るというエンドを意識した接客を行っています。エンドの印象はそれだけ重要ということです。

心理学テクニック2:好意の返報性

好意の返報性(へんぽうせい)とは

好意の返報性は人から「好き」という気持ち行為を与えられると、自分も同じように「好き」を返したくなる法則です。

返報性(返報性)とは「人から何かをしてもらったら、同程度のものでお返ししたくなる」という人間の性質を表しています。

なお、返報性は好意だけに限らず敵意や譲歩にもあり、相手が怒りなどの負の感情を見せると「敵意の返報性」が生まれ、相手が譲る姿勢を見せると「譲歩の返報性」が生まれます。

また、相手がプライベートのことや本心を話したときに、自分も内面を話すことを「自己開示の返報性」と言います。

好意の返報性を営業に使う

好意の返報性は人間関係構築に大きな効果を発揮します。

ショッピングモールで子供に風船をあげている販売ブースを良く目にしますが、これは親に対して好意のお返しで話くらいなら聞こうという姿勢を引き出すために行っています。

また、営業には関係ないプライベートのことを上手に出すことで、顧客から本心を聞き出す打ち解けた雰囲気を作っていくことも効果的です。

顧客が商品検討までに取組んできた行動についても褒める行為も良いでしょう。

これはNG!恩着せがましい

返報性があるとしても、見返りを求める・相手が見返りを察することを表に出してはいけません。

商品の相談に乗ったから購入してもらうということはあり得ないですし、「してあげたのに」という精神は敵意を含むことを忘れないようにしましょう。

古くから営業で「お客様が第一」という方針が取られるそのものが、好意の返報性を生み出すということにもつながっていく、ということです。

心理学テクニック3:ブーメラン効果

ブーメラン効果とは

ブーメラン効果は相手を説得すればするほど、相手の反発を受けて逆の行動を取ってしまう効果です。

やりすぎると「良かれ」と思う行為も「迷惑」に思われることなります。

営業が押し付けにならないように、客観的な視点で会話をする必要があり、多くの人が営業電話を避けることにつながります。

高齢者に高齢者商品として強く説明するより、一般的な説明をした方が印象が良いことがあるのもその1つです。

子供に勉強をしなさいと言うほど、子供が勉強しないという状況もあるでしょう。

説明の熱量は控えめくらいがちょうど良いかもしれません。また、上手に口コミを広げることも良いでしょう。

ブーメラン効果が出る理由1:作為的

ゴリ押しを受けると、どうしてもその裏を感じとろうとネガティブな心理状態に陥ります。

人は自然な流れで自分にとって良い出会いだと、自ら自覚していくプロセスが必要です。

テレビ離れの1つとしても、CMが多いのがうっとおしいという声があります。

SNSが普及して、CMやメディアの発信自体が刷り込みと考える人もいます。

SNSの口コミで広がるというのも、作為性がなく、自然なメッセージで良さが伝わっている証拠でしょう。

ブーメラン効果が出る理由2:自由の排除・反骨精神

そもそも説得するような状況になるとその会話の自由度はなく、Yes・Noの選択肢以外受け付けない流れになりがちです。

会話の自由を奪うことで説得される側の反骨精神も生まれているでしょう。

「いや、他にも選択肢あるでしょ?」となるわけです。

心理学テクニック4:ミラーリング効果

ミラーリング効果とは

ミラーリング効果は、好意を持っている相手の振る舞いをまねて、相手に親近感をもたらす心理効果です。ミラーリングは好感を持つ相手の振る舞いを鏡のように真似をする意味です。

ミラーリングは類似性の法則という、自分と似た人、似たものに対して好感をもたらす心理傾向が深く関係しています。

これは人間関係構築に重要な心理の動きです。

ミラーリングを営業で使う

ミラーリングは積極的に行うことは避けるべきです。作為的だと感じ取られるとNGです。同じタイミングで飲み物を飲む、髪を触るなど自然さを演出できない限り避けるべきです。

ミラーリングの根幹は類似性の法則であり、自分と近い人であることを認識してもらえば良く、「昔、同じように悩んでました。」「同じ出身地です。」というように、共通点を作っていくことで十分です。

また、笑顔を返すというような表情でミラーリングも十分なコミュニケーションになります。

会話のペーシングも大事になります。相手の会話の速さやテンションを相手に合わせると良いでしょう。

心理学テクニック5:両面提示の法則

両面提示の法則とは

両面提示の法則は、メリットとデメリットを同時に伝えることを言います。

メリット、デメリットのどちらかだけを伝えることを片面提示と言います。

両面提示を営業で使う

ブーメラン効果は作為的な状況で生まれることを説明しましたが、両面提示をすることで作為的ではない公平性の高い状況で商品・サービスの良さを理解してもらえるようになります。

提案で大事な点は、透明性です。

デメリットを伝えることで提案内容に説得力が出ることに加え、営業マンとしての信頼関係獲得につながっていきます。

さらには他社商品の良いところまで伝えることで、それでも顧客にとって最適な選択肢である理由に説得力がつき、営業マンとしての知識量も評価されます。

また、デメリットだと伝えた内容が相手にとってはデメリットに感じないものだった、ということも良くある話です。

心理学テクニック6:マジカルナンバー

マジカルナンバーとは

マジカルナンバーは、人間が短期間に記憶できる情報数が「7±2」または「4±1」であること示しています。

アメリカの心理学者ジョージ・ミラーが1956年に提唱した限界情報数が「マジカルナンバー7」です。

不意に与えらえた情報は7個前後が限界ということです。

「人間は一度聞いて記憶できる情報は7±2が限界である」

1956, The Magical number seven, plus or minus two

その後、2001年にアメリカの心理学者ネルソン・コワソンが「マジカルナンバー4」を提唱し、現在は3~5個の情報が限界とする考えが浸透しています。

マジカルナンバーをビジネスに使う

マジカルナンバーはプレゼン・セミナー・商談で意識すべきテクニックです。

マジックナンバーはスティーブ・ジョブズが初代iPhoneの歴史的なプレゼンで活用した方法です。

iPhoneのプレゼンでは、以下の3つに絞ったメッセージで進みます。

  1. ワイド画面タッチ操作のiPod
  2. 革命的携帯電話
  3. 画期的ネット通信機器

3つに絞ることは少なすぎるということはなく、多すぎると理解しきれないという事態に陥ります。当時はガラケーしかない状況です。

会話の最後しか覚えていないというようなピーク・エンドの法則にも関連があり、メリハリをつけたプレゼンを行うこと、必ずまとめで記憶に残してほしいことを3つに絞って伝えきることが重要です。

会話中に意識的に同じキーワードを用いることで、意図したポイントの記憶を維持させることもテクニックの1つです。

特にプレゼンやセミナーでは相手と一切会話をせずに一方的に伝えることになりやすいため、情報過多になりやすいです。

商品などの特徴・メリットを伝える時も3つまでに絞って伝えるように営業資料を見直しましょう。

心理学テクニック7:バンドワゴン効果

バンドワゴン効果とは

バンドワゴン効果とは、多くの人が選んでいる事象に対して、より一層それを選択する人が増える効果を言います。認知バイアス・集団心理でもあります。

認知バイアス:バイアス=偏り。先入観によって非合理的な判断をする心理現象

ざっくり言うと勝ち馬に乗るということです。

「バンドワゴン」とは行列の先頭にいる楽隊を載せた車や馬車のことです。

バンドワゴン効果は政治にも使われ、選挙前にメスメディアで優勢とされる候補者に投票しがちになる現象が現れます。

対義表現に「アンダードッグ効果」、劣勢な立場の事象を応援したくなる心理現象があります。カウンターカルチャーという主流の文化に反する文化が生まれる要因でもあります。

バンドワゴン効果をビジネスに使う

バンドワゴン効果は多くのケースで現れます。会議で複数人が出席する場合、権力が大きい人が賛成することに票が集まることが分かりやすいでしょう。

商談においては、提案時に実績数や導入数を伝えることで「これだけ実績があるから良さそうだ」という心理が働いていきます。

良くテレビでも「1年予約が取れない○○」「○○ランキング1位」というような導入から始まり、説明に入っていくことは、集団心理を利用したバンドワゴン効果を狙っています。

営業マンは上手に定量的な数字をアピールするようにしましょう。

心理学テクニック8:ハロー効果

ハロー効果とは

ハロー効果とは、特定のものを評価する時に目立った特徴に引きずられて、他の内容について評価が歪められる現象のことです。光背効果、ハローエラーとも呼ばれます。

バンドワゴン効果と同じく、認知バイアスの1つです。

ハロー効果はポジティブにも、ネガティブにも働きがあり、1か所が悪目立ちすると他の良さが見えなくなってしまいがちで、特に第一印象で悪いと感じた場合はポジティブに転じにくいです。

そこで第一印象を大切にするために身だしなみが重要視されるわけです。

また、評価対象に全く因果関係のないものにも影響があり、CMで人気のある有名人を起用することで商品の評価を高めるということにつながります。

ハロー効果をビジネスに使う

先に述べた通り、PRに有名人を起用することで印象を良くすることは代表的です。

また、短時間での接客では、身だしなみや容姿で判断される可能性が高くなります。

海外の実験では、スーツ姿の方が倒れているとすぐ助けが来るが、ホームレス風の方が倒れていても5分以上放置されるという違いがありました。

身だしなみの重要性は世界共通です。

他には、英語が話せると仕事ができる人と評価されることも、日本では未だにあるかもしれません。

自分や会社の遍歴で注目しやすいポイントがあれば、さりげなく入れておくと心理的に良い効果を生むでしょう。

心理学テクニック9:バーナム効果

バーナム効果とは

バーナム効果は、誰にでも当てはまる記述(性格など)を見聞きした時に「自分のこと」と思い込んでしまう心理現象です。確証バイアスの1つです。

確証バイアス:自分に不都合な情報は受け入れず、都合の良い情報だけ受け入れる働き

1956年にアメリカの心理学者ポール・ミールがP・T・バーナムの”we’ve got something for everyone”(誰にでも当てはまる要点というものがある)という言葉に因んで名づけられました。

また、アメリカの心理学者バートラム・フォアラーに因んでフォアラー効果とも言います。

バーナム効果は占いでほぼ確実に使われています。

分かりやすい例は、日本の血液型占いで「A型は几帳面」という話を聞きますが、世界的には血液型占いはありません。日本独自の確証バイアスが働いています。

バーナム効果の実験では、被験者に性格診断テストを受けてもらい、診断結果を0(全く当たってない)~5(非常に正確)で評価したところ、平均点は4.26でした。

しかし、診断結果は新聞の星座占いを組み合わせた適当なもので、しかも全員に同じ文章を渡した結果で4.26という平均点になりました。

重要な点は診断テストとして形式を作ったことで、誰もが共通ような文章で言い当てるという状況になっています。唐突に言い当てるという流れでは信じない人が多いでしょう。

バーナム効果をビジネスに使う

占いに来る人に「今、お悩みのことがありませんか?」と聞かれて、否定する方は少ないです。

営業でも同じことで「○○についてお悩みではありませんか?」というように、商材に関する共通課題を軸にした問題提起をすると、相手が自分のことを理解しているという認識を持ちやすくなります。

営業では、顧客に自分が信頼できる営業マン・知識力のある営業マンであることを認識してもらう必要があり、適切に相手の背景も理解しているという流れをつくるべきです。

また、問題提起をすることで相手に考えさせるオープンクエスチョンにつながります。

オープンクエスチョンは顧客の本気度を測る上でも重要なテクニックです。

心理学テクニック10:オープンクエスチョン

オープンクエスチョンとは

オープンクエスチョンとは、Yes・Noで答えられない具体的な回答を得る質問手法です。

オープンクエスチョンに対してクローズドクエスチョンがあり、クローズドクエスチョンはYes・Noで回答する質問です。

コミュニケーションが上手な人ほどオープンクエスチョンをして、会話に発展性があります。

インタビューが上手な人をイメージすると分かりやすいでしょう。インタビュー上手な人は相手の本音をしっかり引き出し、インタビュー中に笑いが生まれることもあります。

オープンクエスチョンをビジネスに使う

オープンクエスチョンが重要視される点は人間関係構築をしやすく、相手に気づきを起こさせる点にあります。

A「どうして○○をやってみたんですか?」

B「○○を使っていますか?」

ABの2つの質問で営業がやりやすくなる質問はどちらでしょうか?

Aの方が深い回答を得やすくなります。Bの回答はYes・Noのどちらかの反応が返ってきた後に掘り下げをする必要があり、相手への質問頻度が増えてしまいます。

質問を重ねすぎると相手に不快感を与えかねません。できるだけ少ないアプローチで本音を引き出し、相手に気づきを起こさせる意識が必要です。

まとめ

ここまで営業で実践すべき心理テクニックをご紹介しました。もちろん紹介しきれていない数多くのテクニックが存在します。

しかし、多くのテクニックでの共通点は、好意的な人間関係構築とバイアスの効果的な利用です。

トップセールスが成果を上げる背景には、経験から無意識に改善を重ねた心理テクニックが身についている可能性も高いです。

ただ、営業は書面で学ぶには限界があります。やはり自社のトップセールスから成功のエッセンスを習得すべきです。

トップセールスの育成は難しい課題ですが、日本では見て見ぬふりをしているが組織が多いです。

一方、アメリカでは既に”セールスイネーブルメント”が2017年頃から有名になり、6割以上の企業がトップセールス育成の組織化に取り組んでいます。

日本でも少しずつMA(マーケティングオートメーション)と同じように遅れて取り組む企業が出てきました。