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ユーザーインタビューで「見えないニーズ」を引き出す極意とは?

ユーザーインタビューで「見えないニーズ」を引き出す極意とは?

施策が響かない「なぜ」を放置していませんか?

アンケートやアクセス解析といった定量データは、ユーザーが「何(What)」をしたか、「いつ(When)」したかは明確に示してくれます。しかし、ユーザーの行動の「なぜ(Why)」、つまり、その行動の背景にある感情、価値観、動機といった核心部分は、データからは見えてきません。

ユーザーが自覚している表層的なニーズや、質問に答えるために取り繕った建前の裏に潜む、言葉にできていない本音こそ、私たちが掴むべき「インサイト」です。

本記事は、その真のインサイトを獲得するための最も強力な手法である「ユーザーインタビュー」について、単なる「ヒアリング」ではなく「調査」として成功させるための目的設定からインサイトの抽出まで、実践で使える具体的なノウハウを徹底解説します。

併せて、商談の会話データから顧客の隠れた本音を可視化するインサイトアナリシス™「Front Agent」についてもご紹介します。

ユーザーインタビューの「真の価値」とは?

定量調査との決定的な違い:「行動」の裏の「動機」に迫る

定量調査は、市場の全体像やトレンドを把握する上で欠かせません。しかし、あるユーザーが競合他社のサービスからあなたのサービスに乗り換えたとして、その「理由」までは教えてくれません。
ユーザーインタビューは、その「理由」——すなわち、ユーザーの行動を突き動かす背景や感情、価値観——に、インタビュアーという人間を介して深く、細かく迫れる唯一の手法です。

施策成功に直結する3つの価値

① ペルソナ・カスタマージャーニーマップの解像度向上
机上の統計データやイメージだけで作成されたペルソナは、どこか現実味に欠けます。ユーザーインタビューで得られる具体的なエピソードや生の声、感情の機微は、ペルソナに血肉を与え、カスタマージャーニーマップをリアルな顧客体験に基づいたものへと昇華させます。この解像度こそが、施策のブレークスルーを生む土台となります。

② 潜在ニーズの発見と事業機会の創出
ユーザーが「もっとこうなったらいいのに」と言葉にすらできていない不満や、「誰も解決してくれていない」と感じている欲求の芽は、ユーザーインタビューの深掘りによって初めて顕在化します。これらは、競争優位性の高いプロダクト・サービス開発や、市場を創造する新規事業のヒントに直結します。

③ チーム内での顧客理解の共通言語化
インタビュー結果を動画や音声、具体的な発言としてチームで共有することで、メンバー間での「顧客像の認識のズレ」を解消できます。全メンバーが同じ共感と危機感を共有することで、施策立案や開発のスピードと質が格段に向上します。

実践を成功に導く!ユーザーインタビューの「目的」の明確化

ユーザーインタビューが失敗に終わる原因の多くは、目的の曖昧さにあります。「とりあえずユーザーの声を聞く」という姿勢では、表層的な感想しか得られず、インサイトにたどり着くことはできません。
インタビューは、明確な「問い」に対する「検証」のプロセスとして設計されるべきです。

目的設定の3つのステップ

Step 1: 「現状の課題」の言語化
まず、今、あなたの事業やサービスが抱えている具体的な課題を特定します。

|例

  • 「新規顧客のサービス登録直後の離脱率が高いのはなぜか?」
  • 「既存ユーザーは、なぜ機能Bではなく機能Aばかり使うのか?」
  • 「競合製品に乗り換えるユーザーは、どのような価値を見出しているのか?」

Step 2: 「仮説」の設定
課題に対する暫定的な答え(仮説)を立てます。これは「答え合わせ」の材料となるものです。

|例

  • 仮説A: 登録プロセスが長すぎて面倒だと感じているから。
  • 仮説B: 最初の利用時にメリットを実感できず、価値を見失っているから。
  • 仮説C: 競合製品との差異がわからず、積極的に使う動機がないから。

Step 3: 「検証項目」の明確化
このインタビューで「何が明らかになれば成功か」を定義します。この検証項目が、質問設計の最も重要な柱となります。

|例

  • 検証項目: ユーザーが登録プロセスで最もストレスを感じた具体的な瞬間とその感情的な理由を把握する。

【重要ポイント】
目的は具体的な行動や感情に絞り込みましょう。「なんとなく満足度を測りたい」ではなく、「サービス利用時の意思決定プロセスや購入後の感情の変化を知りたい」といったレベルまで具体化することで、質問も深掘りもブレなくなります。

インサイトを引き出す実践テクニック:質問設計と深掘りの極意

インサイトは、単に質問を投げかけるだけでは現れません。ユーザーが安心して本音を語れる環境と、行動の裏にある価値観を掘り起こす技術が必要です。

1. 質問設計のポイント

・過去の「具体的な体験」を聞く
「普段どうしていますか?」という抽象的な質問は、抽象的な回答しか返ってきません。

✅ 正しいアプローチ
「直近でこのサービスを使おうと思ったのはいつですか?」「その時、具体的に何をしましたか?(スマホを取り出した?PCを起動した?)」

エピソードベースで質問することで、ユーザーの記憶が鮮明になり、感情の動きが再現されやすくなります。

・オープンクエスチョンの徹底
「はい/いいえ」で答えられるクローズドクエスチョンは、事実確認(例:この機能を使いましたか?)に留めましょう。「どのように」「なぜ」「具体的には」といったオープンクエスチョンを使い、ユーザーに自由に語る余地を与えます。

2. 「なぜ?」を繰り返さない深掘りテクニック

インサイトは、表層的な理由の裏に隠されています。「なぜ?」をストレートに繰り返すだけでは、ユーザーは尋問されていると感じ、口を閉ざしてしまう可能性があります。

① ラダリング(価値の深掘り)

ユーザーの回答の抽象度を段階的に上げていき、行動の根源にある価値観を明らかにします。

  1. 特徴(What):「このデザインが良い」
  2. メリット(How):「部屋のインテリアに馴染むから」
  3. 価値観(Why):「私にとって心地よく、無駄のない生活を送ることを意味する」

ユーザーが「この機能が便利」と答えたら、「それがあなたにとって、どんな良いことがありますか?」と一段掘り下げ、さらに「それは、あなたの仕事や生活で、どんな意味を持ちますか?」と、その人の根源的な価値観に繋げるのです。

② 非言語情報への注目

沈黙、表情、声のトーンなど、言葉以外のサインこそがインサイトの宝庫です。

  • 「今、少し考えるような表情をされましたが、何か引っかかる点はありましたか?」
  • 「少し声のトーンが下がりましたが、その時何か不安を感じていたのでしょうか?」

このように、共感を交えながら非言語情報をフィードバックすることで、ユーザーは隠していた本音や迷いを話しやすくなります。

③ 事実の確認と感情のリンク

ユーザーの「行動の事実」と「その時の感情」をセットで聞くことを徹底します。

  • 事実:「その時、競合製品のレビューサイトを5つほど見ました」
  • 感情:「そこまで調べている時、どのような気持ちでしたか?(期待? 不安? 焦り?)」

特に、ネガティブな感情(不安、不満、イライラ)の瞬間こそ、満たされていないニーズ、すなわちインサイトが隠されています。

「インサイト」への落とし込み:情報の整理と分析

インタビューで集めた情報は、生の声のままではノイズになりかねません。施策に繋がるインサイトへと昇華させる分析プロセスが必要です。

Step 1: ファクトの抽出と構造化

録音やメモから、ユーザーが発した事実(Fact)、行動(Action)、感情(Emotion)を切り出し、1要素1ポストイットなどに書き出します。

  • F:「価格が高いと感じた」
  • A:「購入前に友人に相談した」
  • E:「最初のログイン時、設定の多さに不安を感じた」

Step 2: ペインポイントとゲインポイントの識別

抽出したファクトを、ユーザーが感じた不満・痛み(ペインポイント)と喜び・メリット(ゲインポイント)に識別します。特にペインポイントは、解決策(施策)の優先順位を決める上で極めて重要です。

Step 3: 「ファクト」から「インサイト」を導く

複数のファクトを横断的に見て、ユーザーの行動と感情の間に隠された共通の動機を見つけ出します。

  • 複数のファクト例
    Aさん:「朝の電車の中でニュースサイトの読み込みが遅いとイライラする」
    Bさん:「仕事が始まる前に、要点だけは確実に把握しておきたい」
    Cさん:「週末に溜まった未読情報をまとめて片付けたい」
  • インサイトの定義
    これらを総合すると、ユーザーには「移動中やスキマ時間という限られた時間の中で、情報の見逃しを避け、効率的に摂取したいという焦燥感と時間節約の価値観」がある、と定義できます。

インサイトは、単なるユーザーの声のまとめではなく、「〇〇な状況で、△△したいという、行動に繋がる原動力」を言語化したものです。

インサイトが導く施策の成功

ユーザーインタビューは、データだけではたどり着けない、事業を成功に導くユーザーの本質的な動機(インサイト)を獲得するための必須プロセスです。

明確な目的設定、具体的なエピソードを促す質問設計、そして「なぜ?」を繰り返さない深掘りテクニックを組み合わせることで、真のインサイトは必ず引き出せます。

そのインサイトこそが、顧客ロイヤリティを高め、あなたの施策を競合他社の一歩先へ導く強力な武器となるでしょう。本記事を参考に、ユーザーインタビューを「情報収集」から「インサイト発見」へと進化させてください。

ユーザーインタビューの進め方や活用方法について、さらに詳しく知りたい方は、関連記事もぜひチェックしてみてください。

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