
カスハラ対策が法改正により義務化|事業者に求められる内容は?【令和7年改正】
カスハラ対策が法改正により義務化|事業者に求められる内容は?【令和7年改正】
「理不尽な顧客から怒号で若手社員が辞めてしまった」「度を越した要求にどこまで応じるべきか判断がつかず、現場が疲弊している」――。今、多くの事業者が、こうした「カスタマーハラスメント(以下、カスハラ)」に危機感を抱いています。
こうした事態を背景に、2025年6月(令和7年)、労働施策総合推進法(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律)が改正されました。 これにより、これまで企業の努力義務に近い位置づけだったカスハラ対策が、「義務化」されることになります。
本記事では、令和7年の法改正の中心である「カスハラ対策義務化」の内容を紹介し、カスハラの定義、企業・労働者・顧客それぞれが負うべき責務、そして事業者が今から準備すべき具体的な対応を詳しく解説します。
目次[非表示]
- 1.「カスハラ」の定義とは?
- 2.なぜ今、カスハラ対策が「義務化」されるのか?
- 2.1.1. 統計が示す「現場の悲鳴」
- 2.2.2. 人手不足時代の死活問題
- 2.3.*法改正のスケジュール
- 3.法改正により明確化された「それぞれの責務」
- 3.1.事業主(企業)の責務
- 3.2.労働者の責務
- 3.3.顧客などの責務
- 3.4.国の責務
- 4.事業者が講ずべき「雇用管理上の措置」具体策
- 4.1.① 基本方針の明確化と社内外への周知
- 4.2.② 対応記録を残すための録音・録画環境の整備
- 4.3.③ 相談窓口の設置と適切な運用
- 4.4.④ 事案発生時の対応フローの策定
- 4.5.⑤ 被害を受けた労働者への配慮
- 4.6.⑥ プライバシー保護と不利益取扱いの禁止
- 4.7.⑦ 従業員への教育・研修の実施
- 4.8.⑧ 再発防止策の実施
- 5.カスハラ対策を経営の追い風するという考え方
- 6.法改正を「組織変革」の第一歩に
- 7.「顧客の声」を会社の資産にして、カスハラ対策へ。インサイトアナリシス™「Front Agent」
- 7.1.インサイトアナリシス™「Front Agent」の特徴
- 7.1.1.どこでも、誰でもカンタンに使える
- 7.1.2.CRMやSFAなど既存ツールと連携できる
- 7.1.3.会話を“傾向”データ化し、インサイト抽出
- 7.1.4.インサイト発掘のサポートコンサルティング
- 8.カスハラ対策に役立つおすすめの資料紹介
「カスハラ」の定義とは?
厚生労働省の発行する「カスタマーハラスメント対策 企業マニュアル」では、以下の3点を満たすようなものをカスタマーハラスメントと定義しています。
顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの
「正当なクレーム」と「カスハラ」の比較
正当なクレーム | カスタマーハラスメント | |
|---|---|---|
要求内容 | 商品の瑕疵やサービスの不備に対する謝罪・交換・返金要求 | 瑕疵がないのに金銭を要求、不可能な特別対応の強要 |
態度・手段 | 一時的に不満を伝えるための厳しい口調 | 大声での恫喝、侮辱、土下座の強要、数時間にわたる拘束 |
場所・頻度 | 店頭や電話での常識的な範囲のやり取り | 執拗な繰り返しの電話、ネットへの個人名投稿、自宅への呼び出し |
たとえ顧客側の主張(「商品が壊れていた」など)が正当であっても、それを実現するための手段(「殺すぞと脅す」「SNSで晒す」など)が不当であれば、それはカスハラに該当します。
なぜ今、カスハラ対策が「義務化」されるのか?
今回の法改正の背景には、深刻化する労働現場の疲弊と、それによる経済的損失への強い危機感があります。
1. 統計が示す「現場の悲鳴」
厚生労働省の「令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査」では、過去3年間に「顧客等からの著しい迷惑行為(カスハラ)」の相談があったと回答した企業は27.9%。前回調査から約8.4ポイントも増加しています(令和2年度:19.5%)。特に「継続的・執拗な言動」や「威圧的な言動」が多く、現場の従業員が受ける精神的ダメージは深刻です。
2. 人手不足時代の死活問題
現代は空前の人手不足時代です。カスハラを放置することは、貴重な人材の離職を招くだけでなく、求人時の「ブラック企業」というレッテル貼りのリスクも孕んでいます。「従業員を守れない会社」という評判が立てば、事業の継続そのものが危ぶまれます。
*法改正のスケジュール
公布: 令和7年(2025年)6月11日
施行: 公布日から1年6か月以内(2026年末まで)
法改正により明確化された「それぞれの責務」
改正法では、企業(事業主)の義務だけでなく、労働者や顧客側の責務についても初めて言及されました。
事業主(企業)の責務
事業主には、カスハラから従業員を守るための「雇用管理上の措置義務」が課せられます。これは「やれたらやる」ではなく、法律上の明確な「義務」です。
- 相談体制の整備(窓口の設置)
- 被害を受けた労働者への適切な配慮(メンタルケア、休暇の付与等)
- 発生時の迅速な対応(事後処理・再発防止策)
- 教育・研修の実施
(1)事業主は、職場において行われる顧客、取引の相手方、施設の利用者その他の当該事業主の行う事業に関係を有する者(以下「顧客等」という)の言動であって、諸般の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたもの(以下「カスハラ」という)により、労働者の就業環境が害されないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備、労働者の就業環境を害する当該顧客等言動への対応の実効性を確保するために必要なその抑止のための措置その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない(法33条1項)
(2)事業主は、労働者が(1)の相談を行ったこと等を理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない(法33条2項)
(3)事業主は、他の事業主から当該他の事業主が講ずる(1)の措置の実施に関し必要な協力を求められた場合には、これに応ずるように努めなければならない(法33条3項)
(4)事業主は、カスハラに対する労働者の関心と理解を深めるとともに、従業員が取引先等の労働者に対する言動に必要な注意を払うよう、研修の実施その他の必要な配慮をするほか、国の講ずる広報活動、啓発活動等の措置に協力するように努めなければならない(法34条2項)
(5)事業主や役員も、自ら、カスハラ問題に対する関心と理解を深め、取引先等の労働者に対する言動に必要な注意を払うように努めなければならない(法34条3項)
労働者の責務
従業員もまた、カスハラ問題への理解を深め、同僚と協力して健全な職場環境を作るよう努めることが求められます。また、自らの接客態度が火種にならないよう、スキル向上に努めることも期待されています。
労働者は、カスハラに対する関心と理解を深め、取引先等の労働者に対する言動に必要な注意を払うとともに、事業主の講ずるカスハラ防止措置に協力するように努めなければならない(法34条4項)
顧客などの責務
今回の法改正の画期的な点は、「顧客等もまた、ハラスメントを行わないよう注意を払わなければならない」という姿勢が示されたことです。消費者は「何をしても許される特権階級」ではないという社会的なコンセンサスを、法律が後押しする形となりました。
顧客等は、カスハラに対する関心と理解を深め、労働者に対する言動が当該労働者の就業環境を害することのないよう、必要な注意を払うように努めなければならない(法34条5項)
国の責務
国としては、労働者の就業環境を害する顧客等の言動を防止し、その問題について事業主や国民の理解と関心を高めるため、事業分野の特性を踏まえた広報・啓発等の取組を行うよう努める責務が明記されています。
(1)厚生労働大臣は、事業主が講ずべき措置等に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針を定めなければならない(法33条4項)
(2)国は、労働者の就業環境を害する顧客等言動を行ってはならないことその他当該顧客等言動に起因する問題に対する事業主その他国民一般の関心と理解を深めるため、各事業分野の特性を踏まえつつ、広報活動、啓発活動その他の措置を講ずるように努めなければならない(法34条1項)
事業者が講ずべき「雇用管理上の措置」具体策
では、事業者は具体的にどのような体制を整備すればよいのでしょうか。義務化される「雇用管理上の措置」は形だけでなく、実効性を伴った運用が求められます。
① 基本方針の明確化と社内外への周知
まず重要なのは、トップの明確な意思表示です。
「当社はカスタマーハラスメントを決して容認しない」という方針を、経営トップ自らが宣言し、就業規則や社内規程に明文化します。
さらに、店舗やWebサイト等にカスタマーハラスメントに対する方針を掲示することで、理不尽な要求そのものを抑止する“予防フィルター”として機能させることができます。
② 対応記録を残すための録音・録画環境の整備
企業は被害を受けた労働者を守るための事実確認が求められます。そのためには「証拠」を残すことが重要となってきます。個々の記憶に頼った方法では言った言わないの水掛け論になってしまうことからも、確実な記録ともいえる会話のやりとりを記録した録音データを残すことはとても重要です。
東京都は先んじて「東京都カスタマー・ハラスメント防止条例(令和7年4月1日施行)」を制定していますが、同条例では、対策の一環として録音・録画環境の整備を重視し、奨励金の交付などを通じてその必要性、有用性を周知しています。その他の自治体も録音してやりとりを残す取り組みを行っていることからも、音声や映像を記録として残すことは、官民問わず実効性あるカスハラ対策に欠かせない動きとなっています。
③ 相談窓口の設置と適切な運用
被害を受けた従業員が、迷わず相談できる窓口を明確に設置します。
あわせて、相談対応者に対しては「二次被害」を生まないための適切なヒアリング方法や配慮事項を事前に教育しておくことが不可欠です。「話を聞いてもらえた」「受け止めてもらえた」という実感が、従業員の安心感につながります。
④ 事案発生時の対応フローの策定
現場任せにしないためには、具体的かつ明確な対応基準(マニュアル)が必要です。
例としては、
- 同じ要求を〇分以上繰り返された場合は管理職へ引き継ぐ
- 「殺す」「訴える」などの脅迫的言動が出た場合は、即座に警察・顧問弁護士へ連絡する
など、誰が対応しても判断がブレない基準を定めておくことが、現場の負担軽減につながります。
⑤ 被害を受けた労働者への配慮
カスタマーハラスメント対応で最優先すべきは、被害を受けた従業員の心身のケアです。必要に応じて、特別休暇の付与や配置転換、産業医・外部相談機関の活用などを検討します。
「会社が本気で守ってくれた」という実感は、離職防止やエンゲージメント向上に直結します。
⑥ プライバシー保護と不利益取扱いの禁止
相談したことを理由に、
- 「対応が悪かったから怒らせたのではないか」
- 人事評価を下げられる
といった扱いがあってはなりません。相談者のプライバシーを厳格に保護し、いかなる不利益な取扱いも行わないことを明確にし、組織全体に徹底します。
⑦ 従業員への教育・研修の実施
制度を機能させるためには、現場での理解とスキルが不可欠です。
研修では、
- カスタマーハラスメントと正当なクレームの違い
- 現場で使える切り返しトークや初期対応
- 個人対応ではなく、組織として対応する重要性
などを、実践的な内容で定期的に実施します。
⑧ 再発防止策の実施
発生した事案は「起きて終わり」にせず、必ず振り返りと分析を行います。
発生要因を整理し、対応フローや教育内容の見直しにつなげることで、同様の事案の再発防止を図ります。
その他の法改正における具体的な対応方法は、以下のお役立ち資料・記事に詳しく紹介しているので、あわせて参考にしてみてください。
カスハラ対策を経営の追い風するという考え方
カスタマーハラスメント対策の義務化というと、「また対応しなければならないことが増えた」「コストがかかる」と感じる企業も少なくありません。
しかし見方を変えれば、これは企業の姿勢や価値観を社会に示す絶好の機会でもあります。カスハラ対策は、守りではなく「攻めの経営」へと転換できるテーマなのです。
「従業員を大切にする会社」という明確なメッセージ
「従業員をカスハラから守ります」と明言している企業は、それだけで求職者の目に魅力的に映ります。特にZ世代を中心とした若い世代は、給与や福利厚生以上に、メンタルヘルスや心理的安全性を重視する傾向があります。
カスハラ対策の有無は、「この会社は社員を守ってくれるのか」という問いへの、分かりやすい答えです。その姿勢が伝われば、結果として“選ばれる職場”としてのブランド力が高まり、採用力の強化にもつながっていきます。
良質な顧客に、より良いサービスを届けられる
理不尽な要求や過剰なクレームへの対応は、現場の時間とエネルギーを大きく消耗させます。
カスハラ対策を整えることで、こうした対応に追われていたリソースを、本来大切にすべき「良質な顧客」へのサービスに集中させることができます。従業員のストレスが軽減されれば、自然と接客の質も向上し、顧客満足度の改善につながります。その積み重ねが、リピート率の向上や口コミ評価の改善など、長期的な収益力の強化を支えていくのです。
将来のトラブルを未然に防ぐリスクマネジメント
カスハラ対策を怠った結果、従業員が精神的な不調を訴えたり、深刻な事態に発展した場合、企業は「安全配慮義務違反」として責任を問われる可能性があります。損害賠償だけでなく、企業イメージの低下や採用難といった影響も避けられません。
法改正への対応は、単なる「義務への対応」ではなく、企業と従業員を守るための最低限のリスクマネジメントです。早めに体制を整えておくことが、将来の大きなトラブルを防ぐ最も確実な方法といえるでしょう。
法改正を「組織変革」の第一歩に
令和7年の「法改正」による「カスハラ対策の義務化」は、日本の労働文化が「耐える美徳」から「持続可能な働き方」へと舵を切った象徴的な出来事です。
事業者の皆様にとって、これまで「現場任せ」になりがちだった顧客トラブルを、組織として解決する絶好の機会でもあります。
「うちの業界は特別だから」「昔からの付き合いがあるから」と放置せず、まずは以下のステップから始めてみてください。
- 現状の把握: 現場でどのようなトラブルが起きているか、アンケートやヒアリングを行う。
- 方針の表明: 「従業員の安全を第一にする」というメッセージを社内に発信する。
- 窓口の設置: 既存のハラスメント窓口にカスハラを含める形でも構いません。
カスハラ対策を強化することは、従業員を守ることであり、ひいては会社そのものを守ることに他なりません。
プロモーションの結果(反応率など)を分析し、想定したインサイトが正しかったかを検証します。市場は常に変化するため、このサイクルを回し続けることが重要です。
「顧客の声」を会社の資産にして、カスハラ対策へ。インサイトアナリシス™「Front Agent」
「Front Agent」は顧客とのやりとりで得た録音データをもとに、会話を議事録として自動で記録・保存し、会社全体の資産化とすることができるため、カスハラ対策に有効なAIツールとしてさまざまな企業で活用されています。
カスハラは「言った/言わない」といった感情論になりがちなため、官民問わず、カスハラ対策の一環として、商談や顧客対応を録音し、活用する事業者は増加傾向にあります。先述の通り、録音して記録を残していくことは最早欠かせないアクションの一つとなっています。
Front Agentは会話を録音して記録として残すのみならず、過去の対応履歴や成功・失敗パターンも独自AIで分析可能なため、属人的な対応に依存しない一貫性のある対応方法・基準を組織内でつくることができます。
カスハラ対策として、顧客とのやりとりを蓄積し、分析・利活用していきたいとお考えの場合は、ぜひインサイトアナリシス™「Front Agent」をご検討ください。
インサイトアナリシス™「Front Agent」の特徴
どこでも、誰でもカンタンに使える
操作は簡単で、録音 / 録画ボタンを押すだけ。議事録作成からSFA / CRMへの連携まで全て自動化。蓄積された議事録データからインサイトの抽出までをAIエージェントが支援。
CRMやSFAなど既存ツールと連携できる
「Front Agent」は、既存のCRMやSFAシステムと連携することで、顧客とのやりとりの一元管理と自動記録を実現します。活動記録やレポート作成といった事務作業に費やす時間を削減でき、より多くの時間を顧客との関係構築にあてることができます。
会話を“傾向”データ化し、インサイト抽出
顧客との会話の特徴を抽出。指定した顧客セグメントごとの特徴 / 共通点から、正しい対応方法やインサイトをファクトに基づいて抽出。
インサイト発掘のサポートコンサルティング
VoC活用に課題を感じている企業は多く、その主な理由として「集計や分析をするリソースが足りない」「収集や分析に時間がかかり活用するところまでいかない」が挙げられており、この課題を解決するための初期コンサルティングをセットに。


