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デプスインタビューとグループインタビューの違いと使い分け|メリット・デメリット・活用方法まで解説

デプスインタビューとグループインタビューの違いと使い分け|メリット・デメリット・活用方法まで解説

市場調査や顧客理解を深める際、定性調査は欠かせない手法となっています。中でもデプスインタビューとグループインタビューは、それぞれ異なる強みを持つ代表的な調査手法です。デプスインタビューは個人の深層心理や潜在的なニーズ(インサイト)を丁寧に掘り下げるのに対し、グループインタビューは参加者同士の相互作用から多様な視点や気づきを引き出せます。しかし、どちらの手法を選ぶべきか判断に迷うケースも少なくありません。

本記事では、両手法の本質的な違いから、具体的なメリット・デメリット、さらには目的や状況に応じた最適な使い分けまで、実務に役立つ知識を体系的に解説していきます。

目次[非表示]

  1. 1.「デプスインタビュー」「グループインタビュー」とは?
    1. 1.1.デプスインタビュー
    2. 1.2.グループインタビュー(FGI)とは
  2. 2.デプスインタビューの特徴・メリット・デメリット
    1. 2.1.デプスインタビューの特徴
    2. 2.2.メリット(深掘り・心理理解・インサイトの発見など)
    3. 2.3.デメリット(時間・コスト・合意形成の難しさなど)
  3. 3.グループインタビューの特徴・メリット・デメリット
    1. 3.1.グループインタビューの主な特徴
    2. 3.2.メリット(多様な意見収集・低コスト・非言語情報など)
    3. 3.3.デメリット(同調圧力・深掘り不足・モデレーター依存)
  4. 4.使い分け:目的・テーマ・状況から判断する最適手法
    1. 4.1.デプスインタビューが向いているケース
    2. 4.2.グループインタビューが向いているケース
    3. 4.3.テーマ・対象者特性からの判断基準
    4. 4.4.アウトプット基準から考える手法の選定
  5. 5.インタビュー設計と実施方法
    1. 5.1.調査目的の整理
    2. 5.2.対象者選定のポイント
    3. 5.3.質問設計(オープン/クローズ・バイアス対策・5W1H)
    4. 5.4.実施・分析・レポートの流れ
  6. 6.インタビュー調査を成功させるポイント
    1. 6.1.発言しやすい環境づくり
    2. 6.2.モデレーターの役割と必要スキル
    3. 6.3.成果を最大化するための分析の観点
  7. 7.商談の会話データから勝ち筋・インサイトを抽出するインサイトアナリシス™「Front Agent」
    1. 7.1.インサイトアナリシス™「Front Agent」の特徴
      1. 7.1.1.会話を“傾向”データ化し、インサイト抽出
      2. 7.1.2.インサイト発掘のサポートコンサルティング
      3. 7.1.3.どこでも、誰でもカンタンに使える
      4. 7.1.4.CRMやSFAなど既存ツールと連携できる
  8. 8.インタビューに役立つ記事&資料紹介

「デプスインタビュー」「グループインタビュー」とは?

定性調査の代表的な手法であるデプスインタビューとグループインタビューは、それぞれ異なる調査目的に適した特性を持っています。どちらも対象者との対話を通じて深い洞察を得る点では共通していますが、実施形式や得られる情報の質には明確な違いがあります。

デプスインタビュー

デプスインタビューは、調査対象者と調査者が1対1で向き合い、じっくりと対話を重ねる手法を指します。通常60分から90分程度の時間をかけて、一つのテーマについて深く掘り下げていくのが特徴です。

対象者は他者の目を気にすることなく本音を語れるため、センシティブな話題や個人的な経験についても率直な意見を引き出すことができます。例えば、金融サービスの利用実態や健康に関する悩みなど、プライバシーに関わるテーマでは、この手法が威力を発揮します。調査者は対象者の表情や言葉の選び方にも注意を払いながら、表面的な回答の背後にある真意を探っていきます。

グループインタビュー(FGI)とは

グループインタビューは、複数の対象者(通常4名から8名程度)を同時に集めて行う座談会形式の調査手法です。Focus Group Interview(FGI)とも呼ばれ、参加者同士の対話や反応の連鎖から、予想外の視点や気づきが生まれやすい特徴があります。

ある参加者の発言が別の参加者の記憶を刺激し、新たな意見や体験談が次々と語られることも珍しくありません。実施時間は90分から120分程度が一般的で、モデレーターと呼ばれる進行役が議論をファシリテートします。複数の意見を短時間で収集できるため、商品コンセプトの評価や広告表現の受容性調査など、多様な反応を知りたい場合に適した手法といえます。

デプスインタビューの特徴・メリット・デメリット

デプスインタビューの特徴

デプスインタビューの最大の特徴は、対象者が自由に語れる安心感のある環境を作り出せる点にあります。他者の視線がないため、社会的に望ましいとされる回答ではなく、真の考えや感情を表現しやすくなります。また、調査者は対象者の反応を見ながら柔軟に質問を変更でき、予期しなかった話題でも深く追求できます。この柔軟性により、事前に想定していなかった重要な洞察が得られることも少なくありません。さらに、非言語情報である表情の変化や声のトーン、言葉に詰まる瞬間なども、対象者の心理状態を理解する貴重な手がかりとなります。

単なる「取引」ではなく「信頼関係」が構築されているため、新製品や上位プランを提案した際の成約率が高くなります。顧客は、機能比較表を見て冷静に判断するだけでなく、「この企業の提案なら自分にとって価値があるだろう」という感情的なロイヤルティに基づいて購入を決定するため、結果的にLTVが最大化されます。

メリット(深掘り・心理理解・インサイトの発見など)

デプスインタビューの最大のメリットは、表面的な意見の背後にある動機や価値観まで掘り下げられる点です。たとえば「この商品が好き」という発言に対して、「どの部分が」「なぜ」「いつから」といった角度から質問を重ねることで、商品開発に直結する具体的な示唆が得られます。特に潜在的なニーズの発見においては、対象者自身も気づいていなかった欲求や不満を引き出せる可能性があります。また、センシティブな話題や個人的な体験談についても、信頼関係を築きながら丁寧に聞き出せる点は大きな強みでしょう。

デメリット(時間・コスト・合意形成の難しさなど)

一方でデプスインタビューには、実施に時間とコストがかかるという課題があります。1人あたり60分から90分を要するため、十分なサンプル数を確保しようとすると、調査期間が長期化し費用も膨らみがちです。また、得られる情報が対象者個人の主観に強く依存するため、その意見がどの程度一般化できるかの判断が難しい場合があります。調査者のスキルや経験によって引き出せる情報の質が大きく変わる点も、リスク要因といえるでしょう。

グループインタビューの特徴・メリット・デメリット

グループインタビューの主な特徴

グループインタビューの最大の特徴は、参加者間の相互作用によって議論が深まっていく「グループダイナミクス」にあります。ある参加者の意見に触発されて、別の参加者が新たな視点を提示したり、忘れていた経験を思い出したりする現象が頻繁に起こります。この連鎖的な反応により、個別インタビューでは引き出せなかった多様な意見やアイデアが自然に生まれます。また、参加者同士が共感し合ったり、異なる立場から議論したりする様子を観察することで、ターゲット層の価値観や思考パターンをより立体的に理解できるでしょう。

メリット(多様な意見収集・低コスト・非言語情報など)

グループインタビューの大きなメリットは、短時間で多様な意見を効率的に収集できる点です。複数名を同時に調査できるため、1人あたりのコストを抑えられる経済性も魅力といえます。また、参加者同士の会話を観察することで、言葉だけでなく表情やジェスチャー、相槌の打ち方といった非言語的な反応も把握できます。これらの情報は、ターゲット層の本音や感情を理解する上で貴重な手がかりとなります。アイデア創出やブレインストーミング的な用途では、この手法の効果が特に発揮されるでしょう。

デメリット(同調圧力・深掘り不足・モデレーター依存)

グループインタビューには、集団特有の課題も存在します。最も注意すべきは、声の大きい参加者の意見に他の参加者が同調してしまう「同調圧力」です。本当は異なる考えを持っていても、場の雰囲気に流されて表明を控えてしまうケースがあります。また、限られた時間を複数名で分け合うため、一人ひとりの発言時間が短くなり、深掘りが不十分になる可能性も否めません。モデレーターの進行技術によって、得られる情報の質が大きく左右される点もリスク要因といえるでしょう。

使い分け:目的・テーマ・状況から判断する最適手法

デプスインタビューとグループインタビュー、どちらを選ぶべきかは調査の目的やテーマによって異なります。それぞれの手法が得意とする領域を理解し、状況に応じて最適な選択をすることが、調査の成功を左右するのです。ここでは具体的なケースを踏まえながら、実務での判断基準を明確にしていきます。

デプスインタビューが向いているケース

デプスインタビューは、個人の深層心理や複雑な意思決定プロセスを理解したい場合に最適です。たとえば、高額商品の購買行動調査では、検討段階から購入に至るまでの心理的な葛藤や判断基準を時系列で詳しく追う必要があります。このような場合、じっくりと対話を重ねられるデプスインタビューが威力を発揮します。また、医療や金融といったセンシティブな領域では、プライバシーに配慮した1対1の環境が不可欠となります。さらに、専門性の高い分野のエキスパートインタビューや、ターゲット層の生活実態を深く掘り下げたいペルソナ設計の場面でも有効です。

グループインタビューが向いているケース

グループインタビューは、多様な視点やアイデアを幅広く収集したい場合に効果的です。新商品のコンセプト評価では、様々な角度からの意見や反応を一度に把握できるため、効率的な調査が可能となります。また、広告表現やパッケージデザインの受容性調査においても、参加者同士の議論から予想外の気づきが得られることがあるのです。ブランドイメージ調査やサービス改善のためのアイデア出しなど、創発的な議論が期待できるテーマでは、グループダイナミクスが大きな価値を生み出します。

テーマ・対象者特性からの判断基準

調査テーマの性質と対象者の特性は、手法選択の重要な判断基準となります。テーマがセンシティブであればあるほど、デプスインタビューの方が適切です。一方、日常的な消費行動や一般的な嗜好に関する調査であれば、グループインタビューでも十分な情報が得られます。

対象者の特性にも注目すべきでしょう。たとえば、経営者や専門家など、自身の意見を明確に持っている層にはデプスインタビューが向いています。逆に、若年層など集団での対話を楽しむ傾向がある層には、グループインタビューが活発な議論を生みやすいのです。

アウトプット基準から考える手法の選定

調査結果をどのように活用するかという視点も、手法選択の重要な基準となります。経営層への提案資料として説得力のあるストーリーを構築したい場合、個別の深い洞察が得られるデプスインタビューが有効です。一方、商品開発チームで多様なアイデアを検討したい場合は、グループインタビューから得られる幅広い意見が役立ちます。また、定量調査の仮説構築が目的であれば、グループインタビューで広く意見を集めてから、重要なテーマについてデプスインタビューで深掘りするという組み合わせも効果的です。

インタビュー設計と実施方法

デプスインタビューとグループインタビュー、どちらの手法を選択する場合でも、調査の成功には綿密な設計と適切なプロセス管理が欠かせません。調査目的の明確化から対象者の選定、質問設計、そして実施後の分析まで、一連の流れを体系的に理解することで、調査の質を大きく向上させられます。ここでは両手法に共通する重要なポイントを解説していきましょう。

調査目的の整理

インタビュー調査を始める前に、何のために調査を行うのか、どのような意思決定に活用するのかを明確にする必要があります。目的が曖昧なまま実施すると、質問が散漫になり、得られた情報も活用しにくくなってしまいます。たとえば「新商品の受容性を探る」という目的であれば、具体的にはコンセプトの魅力度なのか、価格の妥当性なのか、それとも競合との差別化要素なのかを明らかにします。この段階で調査の成否の大半が決まるといっても過言ではありません。

対象者選定のポイント

適切な対象者を選定できるかどうかが、調査の質を左右します。まず、調査目的に合致したターゲット層の条件を具体的に定義することが重要です。年齢や性別といった基本属性だけでなく、商品の利用経験や購買頻度、ライフスタイルなども考慮すべき要素となります。リクルーティングの際は、調査内容を詳しく説明しすぎると回答バイアスが生じる可能性があるため、適度な情報開示が求められます。また、参加者が安心して本音を語れるよう、謝礼や所要時間、プライバシー保護についても明確に伝えておく必要があります。

質問設計(オープン/クローズ・バイアス対策・5W1H)

質問設計は、インタビューの成果を決定づける最も重要な要素の一つです。オープンクエスチョン(自由回答形式)とクローズドクエスチョン(選択肢形式)を適切に使い分けることで、深い洞察と具体的な情報の両方を引き出せます。特に定性調査では、「なぜそう思うのか」「具体的にはどのような場面か」といったオープンな質問が中心となるでしょう。一方で、誘導的な質問や回答を限定するような聞き方は、バイアスを生む原因となるため避けるべきです。5W1H(いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように)の視点を活用すると、抜け漏れのない質問設計ができます。

実施・分析・レポートの流れ

インタビューの実施段階では、対象者がリラックスして話せる環境づくりが何より大切です。冒頭で信頼関係を築くための軽い会話から始め、本題に入る前に緊張を和らげることが推奨されます。録音や録画を行う場合は、必ず事前に許可を得ておくべきでしょう。実施後の分析では、発言内容を逐語録に起こし、共通するテーマやパターンを抽出していきます。この際、頻度だけでなく発言の文脈や感情も考慮することが重要です。最終的なレポートでは、得られた洞察を調査目的に照らして整理し、意思決定に役立つ形で提示します。

インタビュー調査を成功させるポイント

インタビュー調査の成果は、設計や準備だけでなく、実施時の環境づくりや進行技術によって大きく左右されます。対象者が心を開いて本音を語れる場をいかに作り出すか、得られた情報をどのように分析して価値ある洞察へと昇華させるか、これらの要素が調査の質を決定づけます。最後に、実務で特に重要となる成功のポイントを具体的に見ていきましょう。

発言しやすい環境づくり

対象者が安心して自由に話せる環境を整えることは、質の高い情報を引き出す大前提となります。まず、物理的な環境として、プライバシーが守られた静かな空間を用意することが重要です。グループインタビューでは、参加者同士が顔を見ながら話せる座席配置にすることで、対話が活性化します。心理的な環境づくりも欠かせません。冒頭で調査の目的や進め方を丁寧に説明し、正解や間違いはないこと、どんな意見も歓迎されることを伝えておくべきでしょう。調査者は傾聴の姿勢を示し、相槌や表情で共感を表現することで、対象者が話しやすい雰囲気を醸成できます。

モデレーターの役割と必要スキル

インタビューの進行を担うモデレーターの能力は、調査の成否を大きく左右する要素です。優れたモデレーターは、対象者の発言を注意深く聴きながら、表面的な回答の背後にある本音や感情を探り当てる洞察力を持っています。また、話が脱線した際に自然に軌道修正したり、発言が偏らないようバランスを取ったりする進行管理能力も必要です。特にグループインタビューでは、全員が平等に発言できるよう配慮しつつ、議論が深まるよう適切なタイミングで質問を投げかける技術が求められます。

成果を最大化するための分析の観点

インタビューで得られた情報を、実務に活かせる洞察へと変換する分析プロセスは、調査の最終的な価値を決定づけます。分析では、発言の表面的な内容だけでなく、その背景にある価値観や動機、感情を読み解くことが重要です。複数の対象者から共通して語られるテーマやパターンを抽出する一方で、少数意見の中にも重要な示唆が隠れている可能性を見逃さない姿勢が求められます。また、発言の矛盾や曖昧さにも注目すべきでしょう。これらは対象者の葛藤や未解決の課題を示唆している場合があります。

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