
カスハラ対策に役立つ事例・施策例紹介|法改正による義務化で従業員を守る
カスハラ対策に役立つ事例・施策例紹介|法改正による義務化で従業員を守る
近年、過剰な要求や暴言、SNSでの誹謗中傷といった「カスタマーハラスメント(カスハラ)」は深刻さを増し、従業員の離職やメンタルヘルス不調を引き起こす深刻な経営リスクとなっています。こうした事態を受け、労働施策総合推進法の改正により、企業にはカスハラ対策を講じることが「義務化」されます。
そこで、本記事では、法改正対応の参考となるカスハラ対策の事例を5つ紹介します。カスハラ対策義務化に向けて、ぜひ参考にしてみてください。
目次[非表示]
- 1.労働施策総合推進法の改正でカスハラ対策が義務化
- 2.カスハラ対策に役立つ事例5選
- 2.1.事例①:JR東日本|ウェアラブルカメラによる「可視化」
- 2.2.事例②:任天堂|「規程」をもとにカスハラを抑止
- 2.3.事例③:ANA・JAL|競合が手を組んだ「業界共通の方針」
- 2.4.事例④:タクシー業界|「運送約款」改定による乗車拒否の正当化
- 2.5.事例⑤:東京都|自治体条例という「法的バックボーン」の活用
- 3.実例から学ぶ、義務化対応のための「3つの柱」
- 3.1.証拠確保とテクノロジーの活用
- 3.2.基準の言語化と明文化
- 3.3.組織的なエスカレーション体制
- 4.カスハラ対策は中長期的な企業成長の後押しに
- 5.「顧客の声」を会社の資産にして、カスハラ対策へ。インサイトアナリシス™「Front Agent」
- 5.1.インサイトアナリシス™「Front Agent」の特徴
- 5.1.1.どこでも、誰でもカンタンに使える
- 5.1.2.CRMやSFAなど既存ツールと連携できる
- 5.1.3.会話を“傾向”データ化し、インサイト抽出
- 5.1.4.インサイト発掘のサポートコンサルティング
労働施策総合推進法の改正でカスハラ対策が義務化
2026年10月より、事業主には「カスタマーハラスメントから労働者を守るための必要な措置」を講じることが法律で義務付けられます。これは単なる努力義務ではなく、対策を怠った状態で従業員が被害に遭った場合、企業は「安全配慮義務違反」という重大な法的責任を負う可能性があることを意味します。
厚生労働省の指針では、カスハラを「顧客等からの要求の内容が妥当性を欠くもの」や「手段・態様が社会通念上不相当なもの」と定義しています。
カスハラの定義や法改正の内容に関しては、以下の資料・記事もあわせて参考にしてみてください。
カスハラ対策に役立つ事例5選
事例①:JR東日本|ウェアラブルカメラによる「可視化」
鉄道駅や車内での暴力・暴言は、危険を伴うことが多く、JR東日本はウェアラブルカメラの導入というハード面での対策に踏み切りました。
【概要】
一部の駅員や乗務員の胸元にカメラを装着。ポイントの一つは、カメラを隠して使うのではなく、「防犯カメラ作動中」といった表示を明示している点です。
【なぜこの施策が有効なのか】
加害者の心理に働く「匿名性の崩壊」が鍵です。カスハラを行う人の多くは、「密室」や「誰も見ていない状況」で攻撃性が高まります。しかし、録音・録画されていることを認識した瞬間、「これは警察に届けられる証拠になる」という理性が働き、多くの場合、言動が沈静化します。 また、万が一裁判や警察の捜査に発展した際、従業員の証言だけでなく客観的な映像データがあることは、企業が従業員を法的に守り抜くための証拠となります。
【ポイント】
「言った・言わない」の不毛な争いを排除したこと。そして、ウェアラブルカメラの存在自体が、現場のスタッフにとって「会社が物理的な盾を与えてくれている」という強力なメッセージとなり、安全性向上のみならず離職防止に寄与しています。
事例②:任天堂|「規程」をもとにカスハラを抑止
日本を代表する企業である任天堂が、2022年に「修理サービス規程/保証規程」を改定し、カスハラに関する項目を追加しました。
【概要】
任天堂は、製品の修理受付に関する規程の中に、以下のようなカスハラ行為があった場合に「修理や交換を断ることができる」という条項を明文化しました。
- 威迫・脅迫・威嚇行為
- 侮辱、人格を否定する発言
- プライバシー侵害行為
- 保証の範囲を超えた無償修理の要求など、社会通念上過剰なサービス提供の要求
- 合理的理由のない当社への謝罪要求や当社関係者への処罰の要求
- 同じ要望やクレームの過剰な繰り返し等による長時間の拘束行為
- SNSやインターネット上での誹謗中傷
【なぜこの事例が有効なのか】
この対策の最大のポイントは、「現場の判断を『規程違反』という客観的な基準に置き換えたこと」にあります。 これまでの現場では、スタッフ個人が「これは酷すぎる」と感じても、「自分の接客に不備があったのでは」と自責の念に駆られたりすることが少なくありませんでした。規程に明文化されることで、スタッフは「お客様の行為は規程第〇条に抵触するため、これ以上の対応はいたしかねます」と、会社という組織の総意として対応を終了できるようになったのです。
【ポイント】
「お客様」という立場を悪用する加害者に対し、毅然とした態度を取るための「法的・論理的武器」を全従業員に持たせたこと。これが、ブランドイメージを損なうことなく、現場の心理的安全性を劇的に向上させることができました。
事例③:ANA・JAL|競合が手を組んだ「業界共通の方針」
航空業界のライバルであるANA(全日本空輸)とJAL(日本航空)が、2024年に共同で「カスタマーハラスメントに対する方針」を策定した事例は、業界全体の底上げを象徴するものとして注目を浴びました。
【概要】
両社は、カスハラの定義と、行為例を明文化しました。
● カスタマーハラスメントの定義
顧客または第三者(取引先など含む)からの優越的な立場を利用した「航空法、その他関連 する法規に反する行為」、及び「これらにつながりかねない行為」、または「義務のないことや社会通念上相当な範囲を超える対応を要求する行為」により、従業員の就業環境が害されること。
● カスタマーハラスメントに該当する行為例
- 暴言、大声、侮辱、差別発言、誹謗中傷など
- 脅威を感じさせる言動
- 過剰な要求
- 暴行
- 業務に支障を及ぼす行為 (長時間拘束、複数回のクレームなど)
- 業務スペースへの立ち入り
- 社員を欺く行為
- 会社・社員の信用を棄損させる行為 (SNS投稿など)
- セクシャルハラスメント (盗撮、わいせつ行為、発言、つきまといなど)※定義ならびに行為例は、上記の記載をもとに各社にて策定しておりますため、各社の方針につきましては一部文言が異なる場合がございます
引用元:ANAグループ|ANAグループ カスタマーハラスメントに対する方針
引用元:JALグループ|JALグループカスタマーハラスメント基本方針
【なぜこの施策が有効なのか】
一社単独での対策には、「あっちの会社は許してくれたのに」という顧客からの比較に弱いという弱点があります。しかし、業界のトップ2社が足並みを揃えることで、「この業界では、こうした振る舞いは一発アウトである」という新しい常識を作り上げました。 また、共同で指針を作ることで、中小の航空会社や関連企業も、その基準を「業界標準」として活用しやすくなりました。
【ポイント】
「どこまで耐えればいいのか」という現場の迷いを払拭したこと。そして、悪質なクレームを繰り返す層に対し、「この業界全体から排除される」という強力なプレッシャーを与えたことに大きな意味があります。
事例④:タクシー業界|「運送約款」改定による乗車拒否の正当化
密室空間での対応を強いられるタクシー業界では、各社が、国が認可する「運送約款」をカスハラ対策の強力な武器として活用しています。
【概要】
国土交通省が認可した新約款に基づき、以下のような場合の「乗車拒否」や「降車」を正当化しました。
●タクシー業界におけるカスハラの具体例
- 乗務員に対する暴言や、威嚇的な言動
- 車内での喫煙や泥酔による迷惑行為
- 規定外のルート走行や無理なスピードアップの強要
- 乗務員のプライバシーを侵害する行為(撮影など)
【なぜこの施策がなのか】
タクシー運転手は、本来「正当な理由なき乗車拒否」を法律で禁じられています。この「断れない」という心理的・法的な弱点を加害者は突いてきます。しかし、約款にカスハラ対応を明記したことで、「法律を守るために、約款に基づいて拒否する」有効という論理が成立しました。運転手一人の判断ではなく、国が認めた共通ルールとして提示できる点が強力です。
【ポイント】
孤立無援になりやすい車内において、「約款」という後ろ盾を与えたこと。これにより、悪質な乗客に対して初期段階で毅然とした警告ができるようになり、重大な暴力事件への発展を未然に防ぐ効果を上げています。
事例⑤:東京都|自治体条例という「法的バックボーン」の活用
2025年4月に「東京都カスタマー・ハラスメント防止条例」が全国初のカスハラ防止を目的とした条例として施行され、以降さまざまな自治体が追随していきました。これにより、各事業者は公的な裏付けを得ることになりました。
【概要】
東京都の条例は、日本で初めてカスハラ防止を自治体として明文化したものです。これを受け、都内の事業者は以下のような動きを強めています。
- 社内外への基本方針・基本姿勢の明確化と周知
- 相談窓口の設置と体制の整備
- 被害防止のマニュアル整備
- 被害を受けた者への配慮
- 就業者への教育研修
- 定期的な見直しや対策の継続
【なぜこの施策が強力なのか】
「わが社のルール」として説明するよりも、「自治体の条例(ルール)」として説明する方が、顧客側の納得感が圧倒的に異なります。加害者が「そんなの勝手な言い分だ!」と反論しても、「いえ、これは東京都の条例に基づくものです」と返すことで、議論の余地をなくすことができるようになっています。
【ポイント】
「公的なお墨付き」を得たことで、これまで対策に消極的だった経営層や、過剰なサービスが美徳だと信じていた古い層に対しても、対策の正当性を証明できるようになりました。
実例から学ぶ、義務化対応のための「3つの柱」
証拠確保とテクノロジーの活用
JR東日本のウェアラブルカメラやタクシーのドライブレコーダーのように、客観的な記録を残す仕組みを作ることです。これは従業員を守るだけでなく、不当な訴えから会社を守ることにも繋がります。
基準の言語化と明文化
任天堂やタクシー業界の例のように、「何がアウトか」を言葉にして、規約や約款に落とし込むことです。現場が迷う余地をなくすことが、最大の防御になります。
組織的なエスカレーション体制
どの事例にも共通するのは、「従業員個人に対応を任せきりにしない」という姿勢です。問題が起きた際、即座に組織(上司、専門部署、弁護士、警察)に繋がるルートを整備しておくことが、義務化が求める「適切な措置」の根幹です。
カスハラ対策は中長期的な企業成長の後押しに
2026年から法制化されるカスハラ対策義務化は、事業者にとって「お客様との関係性を再定義する」機会です。事例に挙げた企業は、単に法律を守るためだけではなく、「従業員が安心して働けない職場に、未来はない」という危機感から一歩を踏み出しています。
カスハラ対策を徹底することは、長期的には従業員の定着率を高め、採用コストを抑え、結果として質の高いサービスを維持することに繋がります。まずは、「わが社は従業員を絶対に守る」というメッセージを対内外に発信することから始めてみましょう。
「顧客の声」を会社の資産にして、カスハラ対策へ。インサイトアナリシス™「Front Agent」
「Front Agent」は顧客とのやりとりで得た録音データをもとに、会話を議事録として自動で記録・保存し、会社全体の資産化とすることができるため、カスハラ対策に有効なAIツールとしてさまざまな企業で活用されています。
カスハラは「言った/言わない」といった感情論になりがちなため、官民問わず、カスハラ対策の一環として、商談や顧客対応を録音し、活用する事業者は増加傾向にあります。先述の通り、録音して記録を残していくことは最早欠かせないアクションの一つとなっています。
Front Agentは会話を録音して記録として残すのみならず、過去の対応履歴や成功・失敗パターンも独自AIで分析可能なため、属人的な対応に依存しない一貫性のある対応方法・基準を組織内でつくることができます。
カスハラ対策として、顧客とのやりとりを蓄積し、分析・利活用していきたいとお考えの場合は、ぜひインサイトアナリシス™「Front Agent」をご検討ください。
インサイトアナリシス™「Front Agent」の特徴
どこでも、誰でもカンタンに使える
操作は簡単で、録音 / 録画ボタンを押すだけ。議事録作成からSFA / CRMへの連携まで全て自動化。蓄積された議事録データからインサイトの抽出までをAIエージェントが支援。
CRMやSFAなど既存ツールと連携できる
「Front Agent」は、既存のCRMやSFAシステムと連携することで、顧客とのやりとりの一元管理と自動記録を実現します。活動記録やレポート作成といった事務作業に費やす時間を削減でき、より多くの時間を顧客との関係構築にあてることができます。
会話を“傾向”データ化し、インサイト抽出
顧客との会話の特徴を抽出。指定した顧客セグメントごとの特徴 / 共通点から、正しい対応方法やインサイトをファクトに基づいて抽出。
インサイト発掘のサポートコンサルティング
VoC活用に課題を感じている企業は多く、その主な理由として「集計や分析をするリソースが足りない」「収集や分析に時間がかかり活用するところまでいかない」が挙げられており、この課題を解決するための初期コンサルティングをセットに。


