
カスハラを誘発するNG対応とは? 心理学から学ぶ対策と拡大させないコツ
カスハラを誘発するNG対応とは? 心理学から学ぶ対策と拡大させないコツ
多くの企業や自治体が対応に苦慮している「カスタマーハラスメント(カスハラ)」。厚生労働省はこれを、顧客などからのクレームや言動のうち、その内容に妥当性を欠くもの、あるいは態様が社会通念上不相当なものと定義しています。
現場で対応にあたる担当者にとって、カスハラは単なる「厳しいクレーム」ではありません。精神的な負担は大きく、時には休職や離職に追い込まれるなど、人生やキャリアに深刻な影響を及ぼす問題です。一方で、最前線で真摯に対応している人ほど、「なぜか自分の対応が相手をさらに怒らせてしまう」「火に油を注いでしまう」と悩みを抱えがちです。
実は、顧客がカスハラへとエスカレートする要因は、相手の性格や気質だけにあるわけではありません。対応する側の「行動」や「伝え方」、そしてそれに反応する人間の心理メカニズムが大きく影響しています。
本記事では、カスハラを誘発してしまうNG行動を心理学の視点から分析し、被害を未然に防ぎ、拡大させないための具体的な対応メソッドをわかりやすく解説します。
目次[非表示]
- 1.なぜカスハラが起きるのか? 心理学の視点から理解を深める
- 1.1.① 社会的比較と優越感の追求
- 1.2.② フラストレーション―攻撃仮説
- 1.3.③ 自己正当化と「正義の味方」の心理
- 2.カスハラを誘発・悪化させてしまう「NG行動」
- 3.被害を最小限に抑える「心理学的」対処のコツ
- 4.事例から学ぶ、心理学的対応方法
- 4.1.事例①:飲食店での「不当な値引き要求」
- 4.1.1.失敗ルート:過剰謝罪による「報酬予測」の強化
- 4.1.2.成功ルート:限定謝罪と「正当性の切り離し」
- 4.2.事例②:小売店での「執拗な説教と土下座要求」
- 4.2.1.失敗ルート:論理的解決を試み、自尊心を刺激する
- 4.2.2.成功ルート:複数人対応と「タイムアウト」の導入
- 4.3.事例③:コールセンターでの「感情的な人格否定と長時間拘束」
- 4.3.1.失敗ルート:同調しすぎて「サンドバッグ化」する
- 4.3.2.成功ルート:共感と「毅然とした遮断」
- 5.カスハラが発生する心理を理解し、組織として対策を打つことが重要
- 6.誠実な対応と「毅然とした態度」の両立
- 7.「顧客の声」を会社の資産にして、カスハラ対策へ。インサイトアナリシス™「Front Agent」
- 7.1.インサイトアナリシス™「Front Agent」の特徴
- 7.1.1.どこでも、誰でもカンタンに使える
- 7.1.2.CRMやSFAなど既存ツールと連携できる
- 7.1.3.会話を“傾向”データ化し、インサイト抽出
- 7.1.4.インサイト発掘のサポートコンサルティング
- 8.知っておきたいカスハラ関連情報
なぜカスハラが起きるのか? 心理学の視点から理解を深める
対策を講じる前に、まずは「なぜカスハラが起きるのか」という心理的メカニズムを理解することが重要です。カスハラ加害者の脳内で何が起きているかを知ることで、冷静な対応が可能になります。
① 社会的比較と優越感の追求
人間には他者と比較して自分の立ち位置を確認する「社会的比較」の性質があります。特に接客現場においては「金を払う側=上、サービスを提供する側=下」という価値観が残っており、顧客に過剰な優越感を与えてしまいます。この優越感が「何を言っても許される」という万能感に変わり、カスハラ加害者の心理として攻撃性を正当化させてしまいます。
② フラストレーション―攻撃仮説
心理学における「フラストレーション―攻撃仮説」とは、目標が阻止された時に生じるフラストレーションが攻撃行動の引き金になるという理論です。現代社会において人々は常に高いストレスにさらされています。仕事やプライベートで溜まった不満(フラストレーション)が、たまたま遭遇した「注文の間違い」や「レジの待ち時間」という小さな火種をきっかけに、接客担当者という「反撃してこない対象」へと爆発的に放出されてしまいます。
③ 自己正当化と「正義の味方」の心理
心理学における「フラストレーション―攻撃仮説」とは、目標が阻止された時に生じるフラストレーションが攻撃行動の引き金になるという理論です。現代社会において人々は常に高いストレスにさらされています。仕事やプライベートで溜まった不満(フラストレーション)が、たまたま遭遇した「注文の間違い」や「レジの待ち時間」という小さな火種をきっかけに、接客担当者という「反撃してこない対象」へと爆発的に放出されてしまいます。
カスハラを誘発・悪化させてしまう「NG行動」
良かれと思ってとった行動が、実は相手の攻撃性を増長させていることがあります。ここでは、心理学的に見て避けるべき3つの行動を解説します。
NG行動1:非がない状態での「無条件・過剰謝罪」
多くの日本企業で行われている「まず謝る」という姿勢。しかし、これがカスハラの呼び水となってしまう可能性があります。
心理的メカニズム:サンクコスト効果と認知の歪み
非がないのに謝罪を繰り返すと、相手の脳内では「謝るということは、お前が100%悪いのだな」という認知の歪みが固定されます。また、対応時間が長引くほど、相手は「これだけ時間(コスト)をかけたのだから、謝罪だけでなく相応の対価(金品や過剰なサービス)を得なければ損だ」というサンクコストの心理が働き、引き下がりどきを見失わせます。
NG行動2:論理と正論での「完全論破」
相手が明らかに間違ったことを言っているとき、論理的に説明して分かってもらおうとするのは自然な反応です。しかし、激昂している相手に正論は逆効果です。
心理的メカニズム:心理的リアクタンス(反発心)
人は自分の考えや行動が他人にコントロールされようとすると、強く抵抗したくなる「心理的リアクタンス」を持っています。特に感情的になっている顧客に対して正論を突きつけると、相手は「バカにされた」「否定された」と感じ、自尊心を守るためにさらに過激な言動で対抗してきます。理屈で勝っても、事態は悪化するのです。
NG行動3:その場しのぎの「曖昧な返答」
「上の方に伝えておきます」「前向きに検討します」といった、その場を収めるための曖昧な言葉は、カスハラを長期化させる最大の要因です。
心理的メカニズム:報酬予測エラー
相手は「検討する」という言葉を「自分の要求が通る可能性(報酬)がある」と解釈します。しかし、後で「やはり無理でした」と回答が来ると、期待が裏切られたショックが「報酬予測誤差」として脳に伝わり、最初の怒りを遥かに上回る怒りとなって爆発します。
被害を最小限に抑える「心理学的」対処のコツ
では、具体的にどのような行動をとればよいのでしょうか。心理学に基づいた「カスハラを鎮静化させる」アプローチを紹介します。
① 「部分謝罪」と「Iメッセージ」の活用
感情的な相手に対し、同調しすぎず、かつ突き放しすぎない絶妙な距離感を保つ手法です。
- 部分謝罪
相手の要求を全て認めるのではなく、動かせない「事実」に対してのみ謝罪します。
NG:「不快な思いをさせて申し訳ありません(=あなたの怒りは100%正しい、という全肯定)」
OK:「商品のお届けが遅れた点については、深くお詫び申し上げます(=遅延という事実にのみ謝罪)」 これにより、心理学的な「譲歩の返報性」(こちらが非を認めたのだから、あなたも落ち着いてくださいという無言のメッセージ)を最小限のコストで働かせます。 - 毅然とした「Iメッセージ」
通常の「Iメッセージ」は自分の感情を伝えますが、カスハラ対策では「私(当方・弊社)を主語にして、こちらの指針や限界を伝える」ために使います。
・YOUメッセージ
「(あなたは)そんな大声を出さないでください!」→ 相手は「指図するな」と反発(心理的リアクタンス)します。
・Iメッセージ
「(私共は)これ以上の大声でのお話が続くようでしたら、対応を継続することができかねます」のように 主語を自分(組織)に置くことで、相手の行動を非難するのではなく、「こちらのルール」を淡々と提示でき、相手の反発を抑えつつ一線を引くことが可能になります。 - 共感の示唆
「お急ぎのところ、そのように感じられるのはごもっともです」と、相手の感情には理解を示します。これにより、相手の「認めてほしい」という承認欲求を一時的に満たし、攻撃の刃を鈍らせます。
② 「第三者の視点」を介入させる(観衆効果)
カスハラは密室や一対一の状態でもっとも激化します。これを打破するのが「観衆効果(オーディエンス・エフェクト)」です。
具体的な行動
「記録のために録音・録画を開始します」「責任者の〇〇を同席させます」と宣言します。人間は「第三者に見られている、評価されている」という意識が働くと、社会的規範を守ろうとする理性が働きやすくなります。
③ 物理的・時間的な「タイムアウト」の実施
怒りの感情は、アドレナリンの放出による生理現象です。アドレナリンのピークは最大でも15分から20分程度と言われています。
具体的な行動
「詳しい資料を確認してまいりますので、10分ほどお時間をいただけますか」と、一度その場を離れます。物理的に距離を置くことで、相手の脳を強制的にクールダウンさせることができます。戻ってきたときには、相手のトーンが下がっていることが少なくありません。
事例から学ぶ、心理学的対応方法
現場で起こりがちな事例を元に、どのように対応すべきの実践例を紹介します。
事例①:飲食店での「不当な値引き要求」
【状況】 注文した料理の提供が5分ほど遅れたことに対し、40代の男性客が「俺の時間を無駄にした。誠意を見せろ。タダにしろ」と大声で怒鳴り始めた。
失敗ルート:過剰謝罪による「報酬予測」の強化
担当者が怖くなり、「おっしゃる通りです。大変失礼いたしました」と平身低頭に謝り続け、店長の判断を仰がずに「今回は特別にサービス(無料)にします」と言ってしまう。
なぜNGか?
相手の脳内では「怒鳴れば得をする(報酬)」という学習が成立します。これを「オペラント条件付け」と呼び、次回以降も同様の行動を繰り返す「常習クレーマー」を生む原因となります。
成功ルート:限定謝罪と「正当性の切り離し」
- 限定謝罪:「お待たせしたことについては、深くお詫び申し上げます」と謝罪を事実に限定する。
- 毅然とした拒絶:「恐れ入りますが、提供の遅れに対する値引きの規定はございません。お代は正規の金額で頂戴いたします」と、要求には応じられないことを明確に伝える。
- 環境の変化:「他のお客様のご迷惑になりますので、別室へ移動していただけますか」と、「観衆効果」を逆手に取って冷静さを取り戻させる。
事例②:小売店での「執拗な説教と土下座要求」
【状況】 購入した商品のパッケージに小さな傷があった。交換対応を申し出たが、「謝る態度が気に入らない」「誠意は形で見せるものだ」と1時間を超える説教が続き、最終的に土下座を要求された。
失敗ルート:論理的解決を試み、自尊心を刺激する
「商品の交換は法的に適切に行っています」「土下座は強要罪にあたりますよ」と正論のみをぶつけてしまう。
なぜNGか?
相手は自尊心を傷つけられ、「心理的リアクタンス(反発)」が最大化します。「客を罪人扱いするのか!」と火に油を注ぐ結果になり、攻撃の目的が「問題解決」から「相手を屈服させること」にすり替わってしまいます。
成功ルート:複数人対応と「タイムアウト」の導入
- 担当者交代:「これ以上の対応は私では判断しかねます」と、あえて担当を代わる。相手の「標的への執着」を分散させます。
- 組織的対応の宣言:「土下座というご要望には組織として応じられません。これ以上続けられる場合は、警察へ通報せざるを得ません」と淡々と伝える。
- 記録の提示:「話し合いの内容は全て記録させていただいております」と伝え、「客観的な視点」を強制的に意識させることで、相手の理性を呼び戻します。
事例③:コールセンターでの「感情的な人格否定と長時間拘束」
【状況】 サービスの設定方法がわからない顧客。電話越しに「お前の説明が悪い」「バカか、日本語が通じないのか」とオペレーター個人を攻撃し、電話を切らせてくれない。
失敗ルート:同調しすぎて「サンドバッグ化」する
「不快な思いをさせて申し訳ありません」と相手の攻撃的な言葉を全て受け止めてしまう。
なぜNGか?
相手は「何を言ってもいい対象だ」と認識し、ストレス発散の道具にする「社会的比較による優越感」を助長させます。オペレーター側の精神的摩耗(バーンアウト)を招く最悪の結果を生んでしまいます。
成功ルート:共感と「毅然とした遮断」
- 感情への共感:「操作がうまくいかず、お困りなのは理解しております」と感情には寄り添う。
- 警告の実施:「暴言が続くようでしたら、このままお電話を継続することができかねます」と、ルールを提示。
- 通話終了:警告後も暴言が続く場合は、「本日の対応は終了させていただきます」と伝え、通話を終了します。これは組織として対応基準を一貫して運用するものであり、いわゆる「一貫性の原理」に基づき、理不尽な要求が通らないことを相手に理解してもらう効果があります。
カスハラが発生する心理を理解し、組織として対策を打つことが重要
心理学的なテクニックを身につけることは重要ですが、個人のスキルに頼るのには限界があります。組織として以下の体制を整えることが、企業としての信頼性の向上にも繋がります。
- 録音・記録の徹底感情的な言葉の応酬を防ぐため、事実を記録する姿勢を見せます。これは万が一の法的措置の際にも重要な証拠となります。
- カスハラの定義と「レッドライン」の明確化「暴言(死ね、バカ等)」「土下座の要求」「拘束時間が30分超」など、即座に対応を打ち切る基準(レッドライン)を策定し、全従業員で共有します。
- 「複数人対応」のルール化カスハラと判断した時点、あるいは予兆がある時点で必ず2名以上で対応する体制を作ります。これは担当者の精神的負担を軽減するだけでなく、前述の「観衆効果」を最大化させます。
誠実な対応と「毅然とした態度」の両立
カスハラ対策のゴールは、相手を言い負かすことでも、無理難題を丸呑みすることでもありません。「正当な顧客には誠実に対応し、不当な要求には毅然とNOを突きつける」。この一貫した姿勢こそが、結果として従業員を守り、企業のブランド価値を高めることに直結します。
心理学的なメカニズムを理解し、冷静に相手の行動を分析する余裕を持つことで、現場のストレスは劇的に軽減されます。まずは、「過剰な謝罪をしない」という小さな一歩から始めてみてください。
「顧客の声」を会社の資産にして、カスハラ対策へ。インサイトアナリシス™「Front Agent」
「Front Agent」は顧客とのやりとりで得た録音データをもとに、会話を議事録として自動で記録・保存し、会社全体の資産化とすることができるため、カスハラ対策に有効なAIツールとしてさまざまな企業で活用されています。
カスハラは「言った/言わない」といった感情論になりがちなため、官民問わず、カスハラ対策の一環として、商談や顧客対応を録音し、活用する事業者は増加傾向にあります。先述の通り、録音して記録を残していくことは最早欠かせないアクションの一つとなっています。
Front Agentは会話を録音して記録として残すのみならず、過去の対応履歴や成功・失敗パターンも独自AIで分析可能なため、属人的な対応に依存しない一貫性のある対応方法・基準を組織内でつくることができます。
カスハラ対策として、顧客とのやりとりを蓄積し、分析・利活用していきたいとお考えの場合は、ぜひインサイトアナリシス™「Front Agent」をご検討ください。
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どこでも、誰でもカンタンに使える
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CRMやSFAなど既存ツールと連携できる
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会話を“傾向”データ化し、インサイト抽出
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