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自治体のカスハラ事例と対策|民間との違いやパターンも紹介【労働施策総合推進法改正】

自治体(公務員)のカスハラ事例と対策|民間との違いやパターンも紹介【労働施策総合推進法改正】

今、全国の自治体で、公務員への住民による行き過ぎた言動「カスタマーハラスメント(カスハラ)」が深刻な社会問題となっています。かつては「住民の声」として耐えるのが美徳とされていた時代もありましたが、現在はその限界を大きく超えています。

公務員を中心とする自治体で働く職員の精神的な不調や離職が相次ぐ中、今求められているのは「職員個人の忍耐」ではなく、「組織としての毅然とした対応」です。本記事では、自治体におけるカスハラの現状と、現場で起きている事例、そして職員を守るための対策の事例を紹介します。

目次[非表示]

  1. 1.自治体のカスハラは民間と異なるのか?
    1. 1.1.カスハラ被害経験率は民間の約3倍
    2. 1.2.逃げ場のなさ(独占的サービスの弊害)
  2. 2.現場を追い詰めるカスハラの「悪質パターン」
    1. 2.1.パターン① 終わりのない「電話」と「揚げ足取り」
    2. 2.2.パターン② SNS・ネット掲示板を利用した圧力
    3. 2.3.パターン③ 「特別扱い」を強要する権威的脅迫
  3. 3.自治体によるカスハラ対策事例5選
    1. 3.1.東京都|全国初の「カスタマーハラスメント防止条例」
    2. 3.2.多数の自治体|名札制度の見直し
    3. 3.3.沖縄県うるま市|カスハラの対応指針を策定・啓蒙
    4. 3.4.愛知県美浜町|損害賠償請求措置
    5. 3.5.三重県桑名市|氏名公表制度
  4. 4.なぜ自治体は「格好の標的」にされるのか?
  5. 5.まず見直すことをお勧めする「組織ルール」
  6. 6.住民がより良い公共サービスを維持するために知っておきたいこと
  7. 7.カスハラ対策を行うことは、職員の満足度を高め、良質な住民サービスをつくる
  8. 8.「顧客の声」を会社の資産にして、カスハラ対策へ。インサイトアナリシス™「Front Agent」
    1. 8.1.インサイトアナリシス™「Front Agent」の特徴
      1. 8.1.1.どこでも、誰でもカンタンに使える
      2. 8.1.2.CRMやSFAなど既存ツールと連携できる
      3. 8.1.3.会話を“傾向”データ化し、インサイト抽出
      4. 8.1.4.インサイト発掘のサポートコンサルティング
  9. 9.知っておきたいカスハラ関連情報

自治体のカスハラは民間と異なるのか?

自治体におけるカスハラの発生率は、民間企業と比較しても突出しています。

カスハラ被害経験率は民間の約3倍

厚生労働省の調査によると、民間企業でのカスハラ経験率が約10〜15%程度であるのに対し、自治体職員を対象とした調査(地方自治体労働組合等の調査)では、約50%近くの職員が「過去3年以内に被害に遭った」と回答しています。

カスタマーハラスメント調査結果|2024-25年「働くみんなの要求・職場アンケート」より

逃げ場のなさ(独占的サービスの弊害)

民間企業であれば、悪質な顧客に対して「出入り禁止」や「契約解除」を選択できる場合があります。しかし、自治体は行政サービスを独占的に提供しており、住民は「その窓口」に行くしかありません。一方、職員側も「住民を拒否できない」という公務員特有の立場があり、これが加害者の優越感を助長し、攻撃を長期化・深刻化させる要因となっています。

現場を追い詰めるカスハラの「悪質パターン」

パターン① 終わりのない「電話」と「揚げ足取り」

  • 内容
    1回の電話が3時間を超える。内容は制度への不満から始まり、最終的には職員の言葉遣いや返答のスピードに対する「揚げ足取り」に終始。
  • 手口
    「さっきは『確認します』と言ったのに、なぜ今は『検討します』なんだ?嘘をついたのか?」と、微細なニュアンスの差を突いて謝罪を強要。「納得できるまで絶対に切るな」と脅し、他の業務を完全にストップさせる。
  • 結果
    職員は「途中で切ると火に油を注ぐ」と恐れ、トイレにも行けず対応。これが数日間続き、最終的にその職員は電話の呼び出し音を聞くだけで動悸が止まらなくなりました。

パターン② SNS・ネット掲示板を利用した圧力

  • 内容
    窓口での対応をスマートフォンで無断撮影し、その場でSNSにライブ配信、または動画サイトへ投稿。
  • 手口
    「税金泥棒の顔を見てください」というテロップと共に、職員の氏名(名札)をアップで映し出す。ネット掲示板にスレッドを立てられ、職員の容姿やプライベートまで誹謗中傷の対象にされる。
  • 結果
    「家を突き止めてやる」といった書き込みがなされ、職員は身の危険を感じて夜道の外出ができなくなる事態に発展。デジタル上の攻撃は、物理的な攻撃以上に「消えない恐怖」として職員を苦しめます。

パターン③ 「特別扱い」を強要する権威的脅迫

  • 内容
    本来、法令や条例で認められない特例(期限を過ぎた申請の受理、減免措置など)を強引に認めさせようとする。
  • 手口
    「俺は市長と知り合いだ」「議員に知り合いがいる。お前をクビにするのは簡単だ」といった権威をちらつかせる。あるいは「誠意を見せろ」と迫り、窓口のカウンターを叩く、土下座を要求するなどの暴力的行為。
  • 結果
    窓口が他の住民で混雑している状況を逆手に取り、わざと大声を出して「恥をかかせる」ことで、要求を通そうとする心理的プレッシャーをかけます。

自治体によるカスハラ対策事例5選

東京都|全国初の「カスタマーハラスメント防止条例」

2025年4月に施行された、全国初のカスハラ防止条例。自治体のみならず、民間企業も対象とし、顧客等の暴言や過度な要求などの迷惑行為を明確に禁止し、事業者・顧客等の責務を規定。

実施内容
カスタマーハラスメントのない公正で持続可能な社会の実現を目指すとともに、顧客等と就業者が相互に尊重し合う関係を築くことを、本条例の基本理念として東京都は位置付けています。条例の施行にあわせ、東京都ではカスタマーハラスメントに関する電話相談窓口を開設。さらに、民間の専門事業者においても、相談窓口の運営などの取組が進められています。

ポイント
「誰もカスタマーハラスメントをしてはならない」という基本原則を条例として明確化。本条例は、企業・団体・事業者・行政機関等を対象に、働く人の人格と尊厳の保護および顧客との対等な関係性の確立を社会全体で推進するための基盤整備を図るものとなっています。

多数の自治体|名札制度の見直し

自治体職員が窓口や市民対応業務で名札に氏名・顔写真を表示していると、苛立った住民による執拗な呼びかけ、SNS等で個人情報の特定・拡散、名指しでの悪質クレーム・嫌がらせなどのリスクが高まっていることから、各自治体が「名札表記の見直し」をカスハラ対策の一部として進めています。

実施内容
フルネーム表記から名字のみに変更。自治体によってはひらがな表記にする

ポイント
SNS時代の職員保護策として物理的・心理的な安全確保に効果。

沖縄県うるま市|カスハラの対応指針を策定・啓蒙

市職員と市民双方の安心安全を確保し、業務への支障を防ぐための「うるま市窓口等対応困難時の基本指針」を策定。

実施内容
エスカレーション方法など不明瞭だったものを指針として明文化。

例1)来庁目的や所管業務と関係のない話題により長時間の対応となる場合、または不当要求行為等により業務に支障が生じると判断した場合は、対応を30分程度で終了する。
例2)脅迫や強要、暴力行為があった際は、速やかに警察等の関係機関へ連絡する。

また、庁舎内に「窓口相談における6つのお願い」というポスターを掲示し、市民への理解も促している。

ポイント
指針が出たことにより職員が行動しやすくなった。啓蒙活動は住民理解の促進につながり、カスハラ減少につながった。

愛知県美浜町|損害賠償請求措置

住民による長期間にわたる過度な要求・暴言等のカスタマーハラスメント行為が問題となり、町議会がその住民に対して損害賠償を求めて提訴する議案を全会一致で可決。これ自体が自治体が住民に対して訴訟措置を取る極めて異例のケースとして注目されました(結果、提訴は見送り)。

実施内容
美浜町議会は、以下の議案を全会一致で可決

・当該男性の不当行為の差し止め
・行為のために発生した職員の対応時間・労力に相当する損害賠償の請求
・訴訟にかかる費用の予算計上

なお、この提訴は「カスハラをやめれば訴訟手続きをとらない」という方針が明記されており、訴訟ありきではない動きとなっています。

ポイント
「過度な要求に自治体として毅然と対応する」という姿勢の表明効果があると評価されています。

三重県桑名市|氏名公表制度

悪質なカスタマーハラスメント行為を防止・抑止するための条例(桑名市カスタマーハラスメント防止条例)を制定し、2025年4月1日から施行。条例の最大の特徴は、過度なカスハラ行為者に対して氏名を公表する制度を設けた点です。

実施内容
第三者委員会の答申を受け、市長が「カスハラ」と認定すると、まずは警告が出され、改善を求めます。警告に従わず、繰り返し悪質な行為が継続された場合、条例に基づき氏名(場合によって町名までの住所等含む)を市のホームページ等で公表という制裁措置がとられます。

ポイント
従来の「対応マニュアル整備」や「対応時間制限」といった対処型の施策とは異なるアプローチであり、カスハラ加害者への強力な抑止力を備えた仕組みとして注目されています。

なぜ自治体は「格好の標的」にされるのか?

  1. 「お客様」を超えた特権意識
    「俺たちは税金を払っているんだから、何を言っても許される」という過剰な特権意識。
  2. 不満の転嫁先
    生活の困窮や制度への不満など、本来は社会全体に向けられるべきストレスが、最も身近な「行政の顔」である窓口職員にぶつけられる。
  3. 「反論してこない」という安心感
    公務員には「全体の奉仕者」という縛りがあり、感情を露わにして反論することが少ないという特性を、加害者は「何をしても安全なサンドバッグ」と認識してしまいます。

まず見直すことをお勧めする「組織ルール」

  1. 「複数対応」と「時間制限」の徹底
    1対1は避ける。また、1回の対応は「30分まで」と決める。それを超える場合は、理由を告げて中断・後日対応にするルールを全体で共有します。
  2. 「名札」の表記見直し
    フルネーム掲示を苗字のみにすることは、先述の通り有効な打ち手です。SNSでの特定を防ぎ、プライベートを守るための最低限の防衛策です。
  3. 「警察との連携」を躊躇わない
    「警察を呼ぶと大ごとになる」という考えは捨てましょう。不退去、威迫、名誉毀損に該当する場合は、即座に警察へ通報する「マニュアル」と「事前の関係構築」が職員の命を守ります。

住民がより良い公共サービスを維持するために知っておきたいこと

自治体の窓口は、住民の生活を支える大切な場所です。限られたリソースの中で、全ての住民の方に公平でスムーズなサービスを提供するためには、利用する側のご協力も欠かせません。
サービスを受ける立場で、「これはカスハラかな?」と迷った際や、不満を感じた際に、以下のポイントを意識してみましょう。

  • 「正当なクレーム」と「カスハラ」の境界線
    ご自身の要望を伝えることは、行政を改善するための大切な権利です。しかし、以下の行為は「正当な権利の行使」とはみなされず、最悪の場合、業務妨害として法的な措置の対象となる可能性があります。
    「人格」ではなく「事象」に焦点を当てる
    制度への不満を、目の前の職員個人の能力や人格(「バカ」「辞めろ」など)にぶつけない。
    「時間」と「場所」を尊重する
    閉庁時間を過ぎての居座りや、他の方の迷惑になる大声は、サービスの遅延を招きます。
  • 「税金で給料を払っている」という誤解
    「俺たちの税金で食っているんだから言うことを聞け」という言葉は、窓口で頻繁に聞かれます。しかし、公務員は「全体の奉仕者」であり、特定の個人の「私的な使用人」ではありません。 特定の誰かだけを優遇することは、他の納税者に対して不公平な行為となります。「公平性を守るためのルール(法律・条例)」を遵守している職員の立場を、理解する必要があります。
  • 職員もまた「地域の一員」であること
    窓口に立つ職員も、業務が終われば同じ地域で暮らす住民であり、誰かの家族です。敬意を持ったコミュニケーションは、結果として職員のモチベーションを高め、より質の高い行政サービスとなって皆様に還元されます。

カスハラ対策を行うことは、職員の満足度を高め、良質な住民サービスをつくる

自治体の役割は、すべての住民に対して公平かつ適正なサービスを提供することです。一部の悪質なカスタマーハラスメント加害者に過度なリソースが割かれることは、結果として、多くの善良な住民にとっての「不利益」にほかなりません。

「職員を守ること」は、すなわち「住民サービスを守ること」です。

組織として明確に「NO」と言える基準を整え、テクノロジーを活用し、法的根拠に基づいて毅然と対応する。その一歩一歩が職員の心身を守り、持続可能な自治体運営につながっていきます。

まずは、あなたの現場で感じている「小さな違和感」を、組織の課題として共有することから始めてみませんか。

「顧客の声」を会社の資産にして、カスハラ対策へ。インサイトアナリシス™「Front Agent」

「Front Agent」は顧客とのやりとりで得た録音データをもとに、会話を議事録として自動で記録・保存し、組織全体の資産化とすることができるため、カスハラ対策に有効なAIツールとしてさまざまな企業で活用されています。

カスハラは「言った/言わない」といった感情論になりがちなため、官民問わず、カスハラ対策の一環として、商談や顧客対応を録音し、活用する事業者は増加傾向にあります。先述の通り、録音して記録を残していくことは最早欠かせないアクションの一つとなっています。

Front Agentは会話を録音して記録として残すのみならず、過去の対応履歴や成功・失敗パターンも独自AIで分析可能なため、属人的な対応に依存しない一貫性のある対応方法・基準を組織内でつくることができます。

カスハラ対策として、顧客とのやりとりを蓄積し、分析・利活用していきたいとお考えの場合は、ぜひインサイトアナリシス™「Front Agent」をご検討ください。


インサイトアナリシス™「Front Agent」の特徴

どこでも、誰でもカンタンに使える

操作は簡単で、録音 / 録画ボタンを押すだけ。議事録作成からSFA / CRMへの連携まで全て自動化蓄積された議事録データからインサイトの抽出までをAIエージェントが支援。

CRMやSFAなど既存ツールと連携できる

「Front Agent」は、既存のCRMやSFAシステムと連携することで、顧客とのやりとりの一元管理と自動記録を実現します。活動記録やレポート作成といった事務作業に費やす時間を削減でき、より多くの時間を顧客との関係構築にあてることができます。 

会話を“傾向”データ化し、インサイト抽出

顧客との会話の特徴を抽出。指定した顧客セグメントごとの特徴 / 共通点から、正しい対応方法やインサイトをファクトに基づいて抽出

インサイト発掘のサポートコンサルティング

VoC活用に課題を感じている企業は多く、その主な理由として「集計や分析をするリソースが足りない」「収集や分析に時間がかかり活用するところまでいかない」が挙げられており、この課題を解決するための初期コンサルティングをセットに。

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